(研修会報告)
テーマ 平成21年度総会及び自主研修会「病院との連携について〜退院支援・調整を中心に〜」
日時 平成21年6月11日(木)13:30〜16:15
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加 220名
講師 広島県緩和ケア支援センター緩和ケア支援室 室長 名越 静香氏

 平成21年度介護保険制度の改正に伴いケアマネジメントに医療連携加算や退院・退所加算が新設された。市域居宅介護支援事業者協議会の今年度の重点課題の一つ、ケアマネジメント上の「入退院支援の確立」と言う観点から、地域社会における病院と在宅、医療と介護の連携確立を目的に名越氏に講演していただいた。以下、講演内容。

 地域を中心に「医療連携」を確立するに至った経緯には医療制度の変革が背景にある。これは社会保障制度を社会構造に合わせた結果であり、現在の医療制度構造改革は、生活習慣病の対策や入院から在宅までの切れ目のない医療提供などを目指す。

在宅シフトの中で、病院との連携を図るためには「地域連携クリティカルパス」の充実が必要である。「地域連携クリティカルパス」とは、急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、診療・治療にあたる複数の医療機関が計画を共有して同一の患者に関わることによって安心して医療を受けられるようにしたものである。これによってそれぞれの医療機関で重複した検査をせず、転院早々から効果的なリハビリが実施でき、地域完結医療を具体的に実現することができる。

 県立広島病院では平成16年から病診連携室を改組して、「地域連携科」を設置。患者の受入や各種相談、退院支援、地域医療機関との連携推進、ガン相談などを業務としている。特に在宅支援の位置づけとして医療ニーズの高い患者は全例について病診連携カンファレンスを実施している。

 「退院支援」に際し、病気や障害が生活に及ぼす影響や病気や障害とどう向き合って自立した在宅生活を続けられるかと言う問題解決の糸口は入院中の情報収集にかかっている。介護支援専門員は、退院時カンファレンスから関わりを持ち始めるのではなく、入院中から積極的に病院内に入り込んでM.S.W(Medical Social Worker)やNs.(Nurse)と関わりを持ちながら退院後の注意点などの情報収集をしてほしい。その上で、在宅において医療を提供するにはどうしたらよいのか?点滴は?カテーテルの交換は?簡便な方法に代えられるか?リハビリはどう進めていくか?を考えていく。多職種が協働する必要性もある。M.S.W.からは、退院後ケアプランが単なる社会資源の組み合わせになる傾向が強いため入院する以前の生活の情報を踏まえて地域の状況と合わせてケアプランの構築をしてほしいなどの要望もある。また、ガン終末期を在宅で看る際には、ケアマネジャー自身もしっかりとした死生観や倫理感を持って本人や家族に関わっていくことも肝要。

 ケアマネジャーが、主治医や近隣の人たちを巻き込みながらも地域の社会資源(ボランティアグループ、老人会や子供会、民生委員会等々)のネットワークの中心に位置して情報発信できるように努めてほしい。また、今後の退院支援の先には介護保険施設も在宅の位置づけとして考えられる。
(研修会アンケートまとめ)
回答数83人
問1.本日の研修会はいかがでしたか。
とても参考になった 36人(43%) 参考になった 46人(56%)
あまり参考にならなかった 1人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)
無記入 0人(0%)    
◎本日の研修会ついての意見、総評(抜粋)
<研修内容について>
今まで、忙しい・・・しかし、必要と頑張ってきた。必要性が非常によく理解でき、大変勉強になる研修でした。夫が肺がんで亡くなった病院で、家に帰らせてあげればよかったと涙が出ました。これからも優しい気持ちで頑張ります。
具体的にかかわった方を思い浮かべながら、どうすれば良いかを考えることができてよかった。
具体的な取り組みの参考になった。話をした看護師から他の人に伝わっていないことが多かったので、連携の書式を工夫しようと思った。
今後、増加してくるであろう入退院調整を研修という形で聞けて、本当にためになりました。
以前、県病院の緩和ケアの講義を伺ったことのおさらいができた。
医療連携におけるニーズと情報提供のポイントについて学ぶことができた。
老健施設を在宅とみなし、なじみのスタッフが看取りをするという発想を発見できました。
在宅での生活を望まれる方々が、心穏やかに安心して過ごされることができますよう、医療との連携を努力したいと思いますし、病院側もお力をお貸しいただきますよう心よりお願いしたいです。
医療ニーズの高い利用者に対する医療連携の大切さを再確認した。病院側の在宅に対するイメージの低さに驚くことも多く、在宅と医療が同じ土俵に立てる努力をしていきたいと思います。
具体的に県病院内を含め、電話番号など教えていただけたので助かりました。また、ネットワークの中での、介護支援専門員の位置づけや介護支援専門員からのアプローチの必要性を教えていただけ、今後役立てていきたいと思いました。
相談できるところ、内容等を具体的に知ることができてよかった。病院に対するアプローチの仕方について学ぶことができた。自分自身も入院前のプランが入院時に必要なのかと思っていましたが、今日の研修で理解できました。
ターミナルの方が在宅に帰られる支援・事例が参考になりました。スピーディーに判断を下すことが必要だと再確認しました。
在宅でターミナルの利用者が増えている中で良い勉強となりました。在宅での看取りは、本人、家族が幸せです。
入院する時は、救急車で運ばれるケースが多く、退院する前に又は状態が安定された時に利用者様に会いに行くのですが、なかなか医師、看護師に会うことが難しく、本人の話のみを聞いて帰ることが多く、後からサマリーを送ってこられることが多い。連携の在り方が難しいとは思いますが、アクティブに動くことが必要であるということ。 ・連携について大変良かった。さっそく生かします。
入院中の利用者様の退院支援へのプロセスがとても参考になりました。入院中の状況、状態によって、今までのケアプランを大幅に見直す必要がある方もいらっしゃいます。情報の取り方を参考にさせていただきながら、より利用者様をサポートできるような関わりをしていきたいと思います。
介護支援専門員から医療側への情報提供(押しかけで厚かましくても)や、アピールが必要なのだと実感させられました。
医療頻度の高い利用者さんを担当することも多く、終末を迎えた時、いかにより添えたかを反省することも多くあり、とても参考になりました。
医療機関との連携が今後大切だと思っていたので、ヒントになって良かったです。
病院との連携を取ろうとアプローチをかけていったが、認知症を理由にリハビリの継続困難、在宅へは戻れないので施設を探すように!と言われたケースが多々あった。本人は家に帰りたいと入院先のベッドで泣いている。本人の思いはどこに反映されているのか?医療職の方の判断基準は、本人なのか、家族なのか。なぜ、調整していただけないのか不満です。
もう少し具体的に連携の部分を知りたかった。今後、資料の具体例を含めて研修があればと思う。
医療連携加算、退院加算についても聞きたかった。
今後参加してみたいと思われる研修のテーマ(抜粋)
認知症について、家族の会の話など 他2名
糖尿病の方が多いので、そのような方の支援方法について教えてくだされば助かります。
頚椎、脊髄損傷などの重度の方の障害者制度との併用プランなど。
医師の在宅での介護について聞いてみたいです。
ALSの方を在宅で支援することができる研修(発症からの関わり方から終末まで)
本人、家族が精神障害の場合もあり困ることがある。精神障害についての関わり方について。
医療に関する専門的知識に関する研修(床ずれ、在宅酸素療法、癌、透析、ALS)
社会資源との連携方法
施設の介護支援専門員、SWとの連携について
具体例をあげて訪問看護と協働できるものを研修してほしい。
介護保険についての情報提供などもお願いしたい。
困難事例解決法
障害者自立支援法及びそのサービスについて
竹内孝仁先生の認知症ケア
<その他、意見>
在宅医が増えるといいと思っています。
医療連携シートの統一化を図っていただきたい。病院側は何が知りたいのか。