(研修会報告)
テーマ 居宅介護事業者研修会 平成21年度事例発表会
日時 平成21年10月30日(金)10:00〜16:00
場所 広島国際会議場「ヒマワリ」
参加 260名
講演 『ケアマネジメント概論』
講演講師 日本福祉大学社会福祉学部保健福祉学科教授  野中 猛先生
事例発表 広島市8区から各1事例 発表
総評 野中 猛先生


■講演
<ポイント>
利用者に対して、病院等の施設はサービス提供を集中してできるが、利用者が自宅に戻った際はどのサービスがニーズを満たすのかわからないので、そのサポートをするのがケアマネの仕事である。また、利用者本人の能力を引き出す為に、いかに有効なサービスが紹介できるかがその手腕にかかっている。
ケアマネはいわば、オーケストラの指揮者の様な役割で、多様なニーズに応える為、多くの専門家の力を借りて利用者の暮らしをバックアップする。全てを直接行うのではなく、全てが行われるように責任を負う。
困難事例とは、利用者本人の考えや行動ではなく、ケアマネが未熟な為に自分で困難事例にしている。
ケースマネジメントの目的としては、利用者に快適に過ごしてもらう事ではなく、本人の能力をいかに引き出すかがポイントだから、ケアマネは利用者の言う事を何でも聞いてばかりもいられない。つまり、“セルフケア能力を伸ばして何ぼ!” の世界である。
利用者から言われる事を何でも引き受けてしまい、最終的に行き詰まって何も出来なかったというパターンが多いが、できる事とできない事をわきまえ、できない事ははっきりと利用者に伝える事が大切。
アセスメントはいわば、『情報整理票』。利用者の生活のシーンが浮かぶ様に作成することが大切。ニーズのアセスとセルフケア能力のアセスができないといけない。
インフォーマルケアは、利用者の暮らしにとって非常に重要で、補填より修復するのがケアマネの仕事だ。その為、ケアプランに取り込む必要がある。
プランニング表の中で、長期目標は夢があって元気が出る内容が良く、短期目標は現実的で達成可能な内容が良い。
プランを立てて実行する以上に、モニタリングが大切だ。やりっぱなしで振返りがないとプランの有効性が実証されない。減算があるからするのではなく、専門家として検証するのは当然の仕事である。

 ケアマネジメントとは何か?ケアマネの役割とは何か?その根本となる考え方や、利用者の生活をサポートする方法等を具体的にかつ、精神論も含め時には例え話を交えわかりやすく教えていただきました。

■事例発表
<安芸区> 老老介護を支えるチームケア 家族の協力が不十分な事例
<佐伯区> 準備不足のまま在宅介護を選択した家族の思いに答えるには?
<中区> 癌末期で家族の関わりの薄い利用者の緩和ケアに向けての支援
<東区> 家で過したいという利用者の思いをかなえるために
       〜血糖値が高いと言われても入院はいやだ〜
<南区> アルコール依存を克服し、「その人らしい生活の実現」を目指して取り組んでいる事例
<西区> 強い不安を抱え、地域からSOSが出ていた高齢者を、地域と一緒に支えた事例
<安佐南区> 長年連れ添った夫婦の行く末とは・・・
<安佐北区> 事業所間の連携によって在宅介護が継続できた事例

■総評
事例を発表するという事はそのケースの振返りができ、「できた事」・「できなかった事」を再確認できるいい機会でもあるし、成功例の裏には、表に出せない影の部分や積み残しもあるはずだ。又、PWは文字ではなく、図で表現することで見ている者の理解が深まる。
事例発表等での課題を整理して、行政に現状と改善の訴えをする事が大切だ。
家族については、「家族に介護を押し付けるな!」・「家族に介護の手を抜かすな!」・「家族をお客様にするな!」という考え方で接する事が大切。又、家族に会議やモニタリングに参加してもらうことも重要だ。
ターミナルについては、考えがしっかりできる状態のときに「今後、どのように生きていきたいのか」・「どのような最後を迎えたいのか」聞いておき、その上で医療体制や介護体制をしっかり確立させないと在宅は無理になる。
アルコール依存については、当事者を責めるのではなくアルコール依存症そのものを取り除かないといつまでたっても問題の解決にはならない。又、専門機関に早めに繋ぐ事も重要である。
利用者に妄想があっても、具体的に行動に表さなかったら問題はない。精神科への相談は、本人が行かなくても家族やケアマネが行っても問題は無いので、活用して欲しい。

発表された事例の内容については、ケアマネはよく利用者に寄り添って対応していると評価をいただき、その上で上記の様な今後の業務の『糧』となるお話を頂きました。
(研修会アンケートまとめ)
問1.本日の講演、総評はいかがでしたか。(回答数133人)
大変よかった 77人(59%) よかった 52人(40%)
ふつう 3人(1%)   あまりよくなかった 1人(0%)
よくなかった 0人(0%)    
<意見>
野中先生の講演は、本当に勉強になりました。本も購入してまだまだ勉強してかないといけないことを痛感しました。ケアマネジャー1年目なので、この様な研修にこれからも積極的に参加していきます。
非常に明快に分析、教授いただき、勉強になりました。
楽しく、鋭く説明していただき、大変良かったです。
とてもわかりやすく、頑張る力になりました。
具体的な例を挙げての説明で、とてもわかりやすかった。話される内容が、当てはまることばかりで、振り返る機会となりました。
野中先生、とても良かったです。今までの講演で1番有意義な時間でした。
野中先生の総評がよく理解できました。
総評に多くの気づきがあり、良かった。また、楽しく総評されて面白かった。
野中先生の根拠に基づくお話を聞き、勉強不足を感じました。
改めてケアマネジメントの重要性を感じた。例えもわかりやすく、頭に入りやすかったです。
ケアマネジャーの業務について、体系化された形を提示されることで、日頃の業務の意義や問題点を再確認、認識でき、興味深い講演でした。先生のケアマネジャー(業務)に対する、やや辛口なコメントも良い刺激になりました。
ケアマネジメント概論をわかりやすく、楽しく聞くことができました。今まで自分が思っていたケアマネジャーの仕事について、はっきりと明確に理解できた。仲介としての仕事に責任を持ちたいと思いました。
ケアマネジメントをわかりやすく、ユーモアも交え教えていただきました。難しい言葉を使われず、頭の中にすっと入ってきました。今までの講演の中で1番素晴らしい講演でした。来年も野中先生でお願いします。
わかりやすい言葉と時折の「カツ」を入れられたような言葉。「プロ意識を持って、プロにならなければ」と感じさせられました。
総評の野中先生の言葉が胸に響きました。
「いくらいいものでも、人は欲しい時にしか買わない」→困った時にしか使わない
「準備万端の人生はない」→その時点での最高のプランを
「その人を責めない。アルコールを責める」→同じ言葉でも考え方の違いで目が違う。
わかりやすく単刀直入な論旨でケアマネジャーが「専門家」として認知してもらえるように、根性でスキルを磨こうと思います。とても楽しくためになる講演でした。
学生の頃からお名前は存じていた先生。痛快、耳の痛い話もありますが、すっきりしています。
例えが非常に具体的で、わかりやすい講演でした。私たちが陥りやすい悩みは、実は自分で招いているという気づきができて参考になりました。
問2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数128人)
大変よかった 51人(40%) よかった 65人(50%)
ふつう 12人(10%)   あまりよくなかった 0人
よくなかった 0人    
<意見>
どの事例も対応に苦慮され、大変だったと思います。連携の大切さ、サービス担当者会議、地域の方々との会議等の重要性を改めて感じた事例が多かったです。
今回のキーワードでは、「家族」「地域」という視点が目立ちました。それだけ現状で家族、地域支援が重要になってきていることを再確認しました。どのケアマネジャーさんも、色々と頑張っておられるのですね。私も負けずにこの仕事に取り組もうと思います。
私の受け持っていない様な事例ばかりで、対応等とても勉強になりました。まだ、経験が浅いので今回学んだことを参考にして対応していきたいと思います。
大変な事例を皆さんよく対応できると感心した。地域の力、行政の力を借りて、困難を乗り切るチームワークが必要だと思う。
皆さん、大変苦労され、多職種の協力を得てサービスを進められており感心しました。お忙しい中、発表され、素晴らしかったです。
どこの事業所も困難事例があり、色々な形でかかわっておられ参考になりました。一人で抱え込まず、色々な手段を使い、より良いサービスを提供できるよう頑張ろうと改めて思いました。
地域の人を巻き込んだ支援体制の難しさを感じました。皆さん、頑張っておられることに頭が下がる思いがします。
素晴らしい事例発表でした。ケアマネジャーになって4か月…。日々の事務処理に追われ、辞めたい気持ちが大きいです。今日の研修に参加し、とてもやりがいのある仕事だと思います。頑張ってみようか…悩んでいます。
南区・・・アルコール依存症。ご本人は「生きていて良かった…」と思われているのでは。良かったですね。
西区・・・娘さんからも「父は幸せ者です」と言われ、引きとられたケース。地域にも恵まれた方でした。
(東区)宅配の冷凍食品とは、ニチイだったのでしょうか?
(南区)主治医は、訪問診療だったのでしょうか?
・・・具体的な情報(業者名、診療所名)があると、参加して良かったと思える。
(東区)食事療法は難しいのに、上手に成功されていて良いと思いました。
(西区)大変困難と思われる事例を、行政、地域、疎遠だった娘さんと結びつけることで、その方の人生が変わった素晴らしいケアマネジメントだと思いました。
(安佐北区)施設しか考えていなかった家族が、在宅介護の良さを体験されて、ケアマネジャーの存在は大きいと感心しました。言われたままのデマンドでサービスを組み立てていては、このようにできないという良い手本だと思いました。
安佐南区の発表がとても良かったです。とても良い事例で参考になりました。
アルコール依存症の発言、参考になりました。
座長の進行や質問内容が良かった。
8事例は多すぎ。せっかく野中先生の来広なのに…と思いました。絞り込んだ1事例を発表者、野中先生と聴講者で検討するという形式で参加したいと思いました。
8事例を一気に発表され、興味深い反面、聞くのが大変でした。
問3.その他、意見、参加してみたい研修テーマについて
他職種との合同研修に参加したい。ひとつのテーマにそれぞれの専門性からの視点で検討しあうようなもの、又は発表しあう形で。
他職種事業者とのディスカッションをしたいです。本心を聞きたいです。(要望、不満、苦情など)
アルコール依存、統合失調症
精神障害、認知症
精神保健に関すること
障害者の自立支援システムと介護保険との組み合わせ等を勉強したい。
リスクマネジメントについて
精神科医師の講演
講演が楽しみです。また、野中先生の話が聞きたいです。
野中先生の講演にまた参加したいです。広島へ来ていただけるようお願いします。
野中先生の事例検討会
精神保健センター長、衣笠ドクターの研修。当人、家族が精神的な問題を抱えている人が多いので勉強したい。
休日出勤やボランティア残業しなければ、事務処理が終わらない毎日です。他の事業所様での仕事に対する書類の工夫や記録の工夫等あれば知りたいです。
ターミナルケア、アルコール依存症
マネジメント技術
交渉力向上のための研修
ターミナルケアのケース検討
地域ケア会議の簡易化(窓口設置)
ケアマネジャーとして、どこまでかかわっていったらよいか。中立性を保つ場合での関係機関、利用者への対応について
ストーリーの把握やケアマネジメント力、交渉力など。ケアマネジャーの知識だけではなく、体験学習、技術学習について。
行政との困難事例の連携
認知症、アルコール等専門医のリスト等を知りたい。
最新のアセスメント手法