(報告)
第1回居宅介護支援事業者研修会「事例発表会」
日時 平成22年10月29日(金)10:00〜16:00
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加者 300名
講演 「ケアマネジャーの技とこころ」
講師 大正大学名誉教授 橋本泰子 先生
事例発表 9事例


■講演
<ポイント>
高齢者の生活を守るために不用意な情報提供をしてはならない、高齢者専用住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)等社会資源を自分の目で確認を行ない熟知して、個別性のある具体的な助言を丁寧に行なう必要がある。
介護支援専門員が行なうべきケアマネジメントの特徴は安全で安定した日常生活維持のための支援であり、生命と生活を包括的に支えるチームを繋ぐコーディネーターである。その上、利用者・家族に寄り添う必要がある。
ケアマネジメントのためには、専門職の連携や情報の正確な把握と共有が必要、特にいのちとくらしを守るためには医師との連携が必要である。
質の高いケアマネジメントのための要素として、ベースに教養(知性・情緒)があり、その上に積み上げる形で価値・倫理そして専門的知識・専門的技術がある、そうしたことの積み重ねにより、実践が出来る。
ケアマネジャー自身の価値観やライフスタイルと違う利用者に寄り添うことのできる柔らかさがある心の持ち主で、自己覚知している人、そして、多くの人に出会い、多くの経験をし、多くの文化財に出合うことによって、自らの感性を養い知性を磨くことのできる人、その上チームを円滑にコーディネートできる円満な人格とリーダーシップの持ち主、以上のようなベースとなる教養(知性・情緒)の適正がケアマネジャーには求められる。
ケアマネジャーの利用者に対する姿勢や態度は、利用者への支援において重視すべき価値や倫理に影響される。
価値とは、利用者を支援する際に重視すべき本質・基本であり、それは、個人の尊厳の保持、人権の保障、平等、生き方の尊重等である。
専門的実践力を高めるには、専門的知識と専門的技術が必要である。

 ケアマネジャーの技と心は何か?その基本となる考えやケアマネジメントのための要素を分かりやすく教えていただきました。


■事例
〈安佐北区〉 家族、地域の協力が、本人の生活を向上させた事例〜夫の介護負担の軽減
  居宅介護支援事業所可部 結城 治雄 氏
〈中区1〉 高齢の母親と難病の妻の二人を介護している男性介護者の心に寄り添って
  広島県看護協会居宅介護支援事業所「中央」 保永 康枝 氏
〈安芸区〉 固執・執着傾向の強い高齢者との関わりを通して学んだこと
  かしの木居宅介護支援事業所 高橋 茂子 氏
〈佐伯区〉 介護力不足で廃用症候群となった事例を通して
  湯来町居宅介護支援事業所 新田 悦子 氏
〈中区2〉 施設入所を望まれるが、入所目前に何度もキャンセルされる一人暮らしの女性
  土谷居宅介護支援事業所光南 満井 豊和 氏
〈東区〉 地域での理解が困難であった認知症高齢者を介護保険制度で支えた事例
  居宅介護支援事業所りらっくす東 古川 由美 氏
〈南区〉 本人のQOLを最後まで確保し終末期を家族とともに在宅で看取った事例
  中国ケアサービス居宅介護支援事業所 幸野 京子 氏
〈西区〉 家族の思いが強く、対応に苦慮している事例
  ケアプランオフィス三滝ひまわり 大背戸 かおり 氏
〈安佐南区〉 在宅での看取りの支援をして
  あすか居宅介護支援事業所 花田 綾子 氏


■総評
<ポイント>
事例の中には、個人が特定できるような倫理に配慮されていない箇所があったので丁寧に書く必要があり、事例発表してもよいか当事者から承諾を取っておく必要がある。
利用者とは、対等な関係であるため業界用語になっている言葉使い、例えばサービスを入れる・介入する等は避けたい。
物語は分かるが、何を目的に援助を行なったか理解しにくいので援助方針とケアプランを明記しておくほうが良い。
総評後もう少し伝えたいと、話をされた。人の生活に関わる援助は一人一人の価値観・ライフスタイルが違うのでエビデンスのある支援は難しい、しかし情報を整理、分析し判断(アセスメント)を行ない再度チェク判断していくことが、自然科学で言うエビデンスに代わる。
感性を養うためには、美しい言葉使い、美しい立ち振る舞いが必要である。

 最後に、ケアマネジャーしだいで、高齢者、家族の生活は決まると話された。
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。173人
大変よかった 128人(74%) よかった 43人(25%)   ふつう 2人(1%)
あまりよくなかった 0人(0%)   よくなかった 0人(0%)    
2.本日の事例発表はいかがでしたか。179人
大変よかった 78人(44%) よかった 90人(50%)   ふつう 11人(6%)
あまりよくなかった 0人(0%)   よくなかった 0人(0%)    
3.講演及び総評についての意見等(抜粋)
ご自身の体験を取り入れながら、わかりやすく、ケアマネジャーに大事なもの、必要なこと等、原点に戻っての振り返りに気付かされました。大変参考になりました。
講演は非常に理解しやすく、現場ですぐ役立つ内容でした。先生よりパワーをいただいたように思います。総評も納得できるものでした。素敵な先生にお会いできて良かったです。
ケアマネジャーは、幅広い医療福祉の社会資源を結びつけるコーディネーターであり、カンフェレンスを主催し、チームで働く醍醐味があります。先生のご講演で勇気づけられました。
分かりやすい言葉で、ケアマネジャーとして、人として基本的なことを教えていただきました。勉強すればするほど、面白い業務だと感じています。
とても心に残る講演だったと思います。ケアマネジャーになって8か月、経験を重ねるたびに、大変で続けられるか自信がなくなることばかりでした。利用者、家族に寄り添っていく形で頑張りたいと思います。
介護保険への心ある熱い思いが伝わってきて、その思いを仕事に生かしていきたいと思いました。久々に心から感動した講演でした。
身の回りで起きている経験を通して、実際に向き合って頑張っておられる姿を見て励まされた。総評は、今後の仕事にとても役立つと思います。
アセスメントの重要性をあらためて感じた。明日からの業務でもう1度見直していきたい。業務だけでなく、自分自身を磨いていくことも大切だと感じた。
美しい言葉使い、美しい立ち振る舞い、服装を心に入れて頑張っていきたいと思います。
仕事を始めて半年、当初の思いとは裏腹に、戸惑いと不安がいっぱいな状態です。講演により、ケアマネジャーとしての仕事の重要性を再確認しました。これからも頑張っていこうと思います。
ケアマネジャーとしての視点の狭さに気付きました。日常の仕事に押しつぶされて、感性を磨くことを忘れていました。
橋本先生の言葉が胸にしみました。明日からの仕事に役立てたいと思います。
演題のとおり「こころと技」の大切さを実感しました。励みになりました。感動しました。
まさに先生の言われる言葉、そのものだと思いました。本当にありがとうございました。
その方の命と暮らしの全ての場面に着目して、地域資源をしっかりコーディネートできるケアマネジャーになれるよう、「あー幸せ」と言わせるケアマネジャーになるぞ、と改めて目標を持たせてもらいました。
先生の話は、わかりやすくとてもいい話でした。初心に返り、ケアマネジャーとして、もう1度よく利用者家族を含め、全体を良く見てアセスメントプランを計画したいと思う。
ケアマネジャーはたくさんの担当を持っており、それぞれにしっかり関わりたいがそうもいかない。介護保険以外の部分もコーディネートしなくてはいけないが、それ以外の部分は、それぞれの専門家にお願いしたい。トータルライフコーディネートなど恐れ多い。
今後、ケアマネジャーの社会的地位向上、報酬アップの為にケアマネジメント協会が力をつけて、政治的にも働き掛けるべきだ。せめて正看護師と同等になる必要があると思う。
わかりやすく、楽しく、内容も非常に良かった。(社会福祉士と保健師がケアマネジャーに向いているということは、必要ないと思う。色々な業種があってしかるべきと思う。偉い人が限定するとは…ガックリです。)
4.事例発表についての意見等(抜粋)
どの事例も参考になるものばかりでした。これからの職務に非常に役立ちます。
じっくり寄り添うことで、心が通じるものだと思いました。
家族問題など、自分の担当の中にもある事例を聞き、大変参考になりました。
現在、持っている例にとても助かる事例もあり、今後の支援に役立ててまいります。
色々な困難事例を聞かせていただきありがとうございました。客観的に事例を見ると大変わかりやすく見えてくる部分も多くあると思います。
事例提出にあたり、区の保健師さんの助言がとても助かりました。色々勉強になりました。
主たる介護者が男性である場合の困難さが改めてわかり、良い勉強になりました。
今回は、家族への支援をテーマにしたものが多く、また男性介護者として苦悩する事例など、タイムリーだなぁとつくづく感じた。
ターミナル期のケアマネジャーの関わりは、本当に難しいですよね。家族の思いとのギャップ、専門性の押し付け、それまでの本人、家族の生活歴の把握不足、介護給付の発生しないプランもあっても良いのではと思いました。
同じような困難ケースがあり、うんうんと頷きながら聞かせていただいた。ケアマネジャーとして自分も頑張らねば・・・と感じた。
皆さんが、日々、素晴らしいケアマネジメント、サポートをしておられること、そのご苦労を知ることができ、苦しさ、素晴らしさを共有できた気がします。
ケースに対し熱心に取り組む姿勢が見えて、非常に共感できた。事例が教材であることを強く感じる。
苦労や大変な工夫をしながら、深い支援経過に感動しました。
同じような事例で、日々奮闘されているなあと皆様、本当にご苦労様です。あきらめず「その人らしい生活」を支えてあげてほしいと思います。
家族の心の変化、ケアマネジャーの価値観の変化、気づきを聞くことができ、この仕事に一生懸命向き合ってきて良かったと思いました。
短い時間での発表で、もう少し掘り下げて1つ1つ事例をじっくり検討したかったです。
事例発表は、少なく(5〜6例)にしても、1つずつ質疑応答など踏まえて、深く検討したいと思った。
せっかく時間を費やして資料を作られるのですから、もう少し時間をとって、発表事例を少なくしてみてはどうでしょうか。
事例研修でもっと討議できる形式にしてはどうでしょうか。
特定の地域を表現される場合は、中区等ではない方が良いと思います。(例C区等) 年齢も同様で「79歳」ではなく、「70代後半」とされると良いかと。写真を使用する場合は、「同意を得た」又は目に黒線を入れる方が良いと思います。パワーポイントを使用されるので分かりやすい表現は必要ですが、チェック体制も確認も発表される前に複数でされてはどうでしょうか?視覚的に見えづらい(色やフォントの大きさ)もあり、残念に感じました。
5.今後参加してみたい研修会テーマ
やはり事例発表会にまた参加したいと思います。
何度受けてもよくわからない自立支援法、有益さをきちんと説明できる成年後見制度
終末期医療と看取り支援について
ケアプランの内容的なことの勉強会をしてほしい。
介護福祉士であり、医療への知識不足を日々感じる。その様な研修が今後あることを希望します。
認知症の方の介護及び介護に携わる家族への支援。家族は認知症の方へ言ってはいけない言葉や態度をとられ、それを言うと家族へのストレスになったり、家族がケアマネジャーに話さなくなったりする。
認知症の方への対応や医療的な面
事例発表や事例検討会の進め方、事例のまとめ方を学びたい。
入所施設の特色及び選択にあたっての注意点について
介護保険以外の制度について
高齢者虐待
ケアマネジャーの地位向上の為の紙屋町のデモ行進
再度、橋本先生の講演
6.その他ご意見(抜粋)
毎年各区で事例を出す→発表する→聞く→質問する、10年続けてくださったこと感謝しています。毎年、積み重ねることで自分自身もケアマネジャーの技、こころが向上していると思いますし、広島市全体のケアマネジャーのレベルも高いものになっていると思います。今後も継続を希望します。
毎年、この事例発表会には事業所全員で参加させてもらっています。良い機会になっています。来年も介護支援専門員として共感、そして意欲高揚となる講演を期待しています。
年に4回くらいの研修をしてほしい。
入院中でも状況確認し、退院後の生活の準備など行っているが、入院中は支援費はない。病院のソーシャルワーカーはケアマネジャーを呼び、動くのはケアマネジャーである。私は、1年間退院の準備、キャンセルの繰り返し、家族の相談にものり、結果本人は亡くなりました。一度も支援費はなしです。もっと認めてほしいです。