(総会・研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第12回平成24年度事例発表会
日時 平成24年11月28日(水)10:00〜16:00
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加者 340名
講演 「医療と介護の連携」
講演講師 公益財団法人 日本訪問看護財団 常務理事 佐藤 美穂子 氏


■講演
<ポイント>

今なぜ、連携が強く言われているのか、介護保険制度創設時から制度改正の動向を振り返る。
1回目の改正、2006年から地域包括ケアが芽生えている。地域包括支援センター、地域密着型サービス、介護予防への取り組み、施設サービス利用者負担の見直し等。
2回目の2012年において、地域包括ケアシステムの構築、重度者への医療ニーズ対応として、介護福祉士等による痰の吸引が法の中で整備された。

介護保険制度に対する評価
(1) 制度創設以降、制度を評価する割合が徐々に増えており、2010年には96パーセントとなっている。
(2) その内容は、介護負担の軽減、介護サービスが選べるようになった、介護サービスの質が向上したなどが挙げられている。
(3) 今後10年間の介護保険の展望に対する意見として、現行の制度のままでは、「維持できない」が87パーセントに上っている。その理由は「介護保険料の上昇」と「サービス不足」が挙げられている。特に、認知症医療ニーズでサービスが対応できなくなるが30パーセントあり、制度を変えていくこと、作り出していく努力も必要である。

改正の主旨を押さえながら2025年のあり方と連携強化に対する課題を整理する。
1. 介護職員等の喀痰吸引等に関する連携
各専門職の専門性と役割の確認をし、ケアマネジメントにおける連携の留意点を押さえる。医師の業務の多忙性や立場を考慮し、どの時間帯に連絡を取ることが良いのかを考えること。また、指示書をもらう時などはケアマネジャーの言い方一つで結果が変わってくるので気をつけること。医師は自分たちの専門性を発揮したいと思っている。訪問看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、歯科医師など、医療職の専門性を踏まえて連携を取りケアプランに反映させていくこと。担当者会議においても、専門職の意見を聞き効果的な会議運営が求められる。特に、医療依存度の高い人、また喀痰吸引のある人については訪問看護を入れることが良い。
   
2. 医療機関から退院する場合の医療と介護の連携
入院時情報連携加算が付いていることからも、入院時もケアマネジャーは病院へ足を運ぶこと。退院後2週間は医療保険で訪問看護が提供できる場合があるので、その間に訪問看護の看護師から情報を得て、次のプランへ生かしていく。
医学モデルから社会モデルへ、キュア主体からケア主体へ、と病院から在宅への支援は変わっていく。訪問看護師は、フィジカルアセスメントを求める。従って看護師の質が問われる。
   
3. 在宅療養支援における医療と介護の連携
訪問看護の内容で、緊急時対応は9.1パーセント。リハビリテーション54パーセント、病状観察が97パーセントというデータになっている。
訪問看護における病状変化・急変時の対応については、看護師の電話での対応力が一番問われる。また、通常の訪問看護の質が問われることとなる。家族などと予測される状態や病状変化時の対応について充分説明し納得していただくことで、緊急時訪問は少なくなる。
   
4. 在宅看取りにおける医療と介護の連携
一般国民は63パーセントが、ガン末期になったとしても自宅を希望しているが66パーセントが困難と感じている。理由は介護負担と症状の急変への不安。看護師は自宅療養が40パーセント可能と考えており、37パーセントが実現可能と考えている。専門性の発揮できるところである。
見取りの症状を急変としないための体制作りも大切。退院時の調整と家族、介護者、ヘルパー、ケアマネジャーが予測される状態のプロセスとそのときの対応方法を共有しておくことが大切である。在宅で看取りを希望される方に対して、退院時に何かあったら病院に何時でも入院してください、といわれて、病院で最後を迎えることが多い。病院は在宅医療チームに任せる。その上で往診が依頼できる医療連携体制が不可欠です。
関わるチームは病院への過度な期待はしないで欲しい。無理に胃ろうなどにしない。本人が受け付けない、という意思を認めていく。急変ではなく状態変化として受け止められる心の準備をする為にも訪問看護の活用をしてください。医療と生活の双方を見れるのが訪問看護師です。人は手足が冷たくなっても、脳に最期まで血液がいきます。五感の中でも耳は最期まで聞こえるので耳元で感謝の言葉や、最小の励ましを言いましょう。見た目には苦しそうでも本人はそうではありません。折角在宅でがんばっていても最後を病院に送ると、病院は命を助けるところなので生かされてしまいます。本人の意思に関係なくです。
連携から統合と言ってもいいでしよう。統合されたケアプランを作ってください。

■事例
〈西区〉 関係機関と連携をとりながら支援を行っている事例
広島中央保健生協居宅介護支援事業所
志々目 和恵 氏
〈安佐南区〉 自宅で生活をしたい思いを叶える為に
〜家族・地域・医療・介護のアプローチを通して〜
ニチイケアセンター中筋
坂井原 博美 氏
〈安佐北区〉 認知症高齢者の独居生活を多職種で支えた事例
津田診療所居宅介護支援事業所
上野 美智枝 氏
〈安芸区〉 骨盤骨折により寝たきり状態となった高齢者の支援について
居宅介護支援事業所「やすらぎ」
樋藤 友樹 氏
〈佐伯区〉 閉ざされた男性介護者の虐待事例を通して
居宅介護支援事業所ファイネス
吉本 玉衣 氏
〈中区〉 数回の入院のたび医療連携を重ね在宅生活が継続できた事例
たかの橋居宅介護支援事業所
石田 久美 氏
〈東区〉 在宅にて癌末期を看取るケアマネジャーの役割について
広島県看護協会居宅介護支援事業所「若草」
三橋 紀子 氏
〈南区〉 夫婦を在宅で支えていく為にチームでフォローしている事例
居宅介護支援センターこうせい
児玉 京子 氏

■総評
ガン末期、精神疾患、認知症の在宅支援がこれから課題となると思われる。今回の発表事例にも、そのような特徴ケースがあった。民生委員、遠方の家族、近隣の人たちを巻き込んで支援していることはすばらしい。そして、家族や本人の力を引き出している。利用者を地域で生活をする主体者としてみるときにはこのようなインフォーマルサービスは欠かすことが出来ない。全事例を通して、本人や家族の思いを尊重すると言うことはわかるが、専門家として分析するときの視点として、訪問看護者の立場でどの事例にも共通して言えることは、医療をもっとはやめに入れて欲しいと言うこと。例えば、治療が必要な人には、早めに治療を受けるようにする。薬の管理が難しい人には、本人にとっての不安を早く取り除く調整として医療連携を早い時期にする。認知症の人にとっては、地域での見守りを組み立てていることはすばらしいが、予防的な立場での訪問看護が必要ではないか。痛みや、褥瘡の予防にも、もっと早く専門職として医療との連携を取ることが望ましい。
(アンケートまとめ)
1.本日の講演、総評はいかがでしたか。(回答数223人)
とても参考になった 102人(46%) 参考になった 104人(47%) ふつう 14人(6%)
あまり参考にならなかった 0人(0%)   参考にならなかった 3人(1%)    
2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数225人)
とても参考になった 87人(39%) 参考になった 119人(53%) ふつう 16人(7%)
あまり参考にならなかった 3人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)    
3.講演及び総評についての意見等(抜粋)
医療と介護の連携はこれからの大きなテーマでありますが、医師との連携に苦手意識があるため今後は積極的に取り組みたい。
医療と介護の連携について看取りを在宅でする事、加算についてが印象的でした。
講演は分かりやすく、知っている事はより理解でき、あまり知らなかった所は、学ぶ事ができる機会となった。
基礎資格が介護福祉士で医療ニーズをつかむ事が難しく感じています。今日の研修で、より医療職との連携を上手に行っていけるように工夫していきたいと思います。
幅広い内容を分かりやすく講演して頂いた。報酬の面も医療と介護での違いなども聞けて良かった。改めて訪看(看護師)の役割が整理できたので、どんな時に訪看を導入したら良いのかなど、参考になった。
医療系のサービスの利用については連携がとりにくいという印象がありましたが、医療との連携の大切さがよく分かりました。
医療依存が高い方や、ガン末期の方もいるなか、医療との連携は必要と感じた。
ヘルパーの痰の吸引についてくわしく聞けて良かった。
色々な取り組みをされており、今後の支援に参考させていきます。
医療の重要さ、予防の面でも導入が必要である事が分かった。
ケアマネジャーとなってまだ日が浅く、上手にサービスを利用することが出来ていないと思っているので、訪問看護のサービス導入の参考になりました。
医療連携の重要性をあらためて感じました。現在担当しているケースについてもより広い視点を持ち関わっていきたい。
H24年の法改正によりヘルパーの吸引が研修などにより可能になりましたが、訪問介護事務所で吸引に取り組まれているところが少なく、私も現在ALSの方を担当していますが、吸引を依頼しても受けていただけず、家族(特に妻)の負担が多くなっています。訪問看護だけでは限界があり、とても困っています。制度として一定の条件をクリアすれば、ヘルパーの吸引も可能になりましたが、法改正以降ハードルが高くなり、難しい状況があるため、訪問介護事業所にもっと働きかけて欲しいと感じました。
短い時間に濃厚な講義だった。かけ足で受講したのでもう少しゆっくり受講したかった。
訪問看護の導入方法は、介護、医療両面で活用ができる様になりチームアプローチの上でも力になると思います。しかし介護士の吸引は、まだまだ確立できているわけではなく、今後も課題があると思います。
医療との関わりは常に行っていますが、今までに看取りを自宅で担当したことがありません。実際に関わる心構え、他事業との連携がとても大切だと思いました。
「予測される場合は、急変とはいわない」「急変としない準備体制が大切」「在宅医療チームに任せて!」「救急車を呼ばない」が印象的でした。
訪看の介護保険と医療保険の違いがわかった。病状把握、体調管理、予後の知識の大切さがわかった。
医療との連携、先生との連携はわかりにくい。訪問看護の説明があって良かった。
講演では、看取りの対応での大切になってくる準備等具体的に学べたと思う。総評では、関わっている事例もあり、何をすべきだったか、これから何をしたら良いか気付くきっかけになった。
訪看の重要性は最後を在宅で看とられる方には特に感じていますが本日の講演で急変なのか予測されるものなのかの判断と家族の心得などいざと言う時に慌てないようなケアが必要と感じました。
訪問看護について導入の仕方がなかなか難しいことがあった。主治医から言われるまま看護師に言われるままになっていたが、今後は主治医・看護師と協力して中身をしっかり考え、医療と連携をとっていきたいと思う。
ケアマネ歴まだ3ヵ月ですが、今後の参考にさせて頂きます。
前半は、どういう視点でお話しをきいたらよいか、わからなくなったりしたが、急変と症状の変化の違い、救急車を呼ぶということの意味などのお話しをおききし、胸のケースに対しての参考になった。と同時に、医療、看護職との連絡を深めることの重要性をより感じた。
年々医療度の高い利用者が増えている。医療との連携がとても必要になっていると思います。
佐藤先生のお話はとても参考になりました。時間が短い為早口での講演になり、こちらの理解がおいつかない状況でした。ケアマネにとって苦手の分野ですが、一番大切な事と痛感しました。
制度がいつのまにか整備されていても直接関わる機会がないと知らず、勉強する機会があって勉強になりました。地域包括ケアでは各職種の役割分担がとても重要で、それを具体的に明確にし、マネジメントしていくことがCMの役割かなと思いながらお聞きしました。総評で早めに、予防的にというお言葉が多かったですが、CMもそう思っていてもそれが難しいからこその困難性があるので演者には少し厳しかったのでは、と思いました。
訪問看護を利用した場合の利点についてよくわかった。
自分の担当ご利用者の中で訪看をはじめとして医療との関わりが深い人が増えており、CMとして経験が浅い私にとってはわかりやすかったです。
今の問題、認知症、ガン末期、精神疾患など重視し勉強になった。
訪問看護の重要性がよくわかりました。在宅で最期が迎えられるよう支援していきます。
訪問看護の利用について、改めて導入を考えてみたいと思いました。通常、訪問看護さんから、多くの情報いただき、一番頼りにさせていただいているのに、ヘルパーさんからの情報等あまり伝えていないという思いも有りました。連携ノート等の利用はしていますが、まだまだ話す機会を設けて緊急に呼ばれる事を避けていけるようになればと思いました。
4.事例発表についての意見等(抜粋)
医療連携の必要性、精神疾患の方の対応の難しさと、それぞれの専門のアドバイスや指示を受けて協力を受ける大切さを再確認した。
それぞれのケースで、壁にぶつかる事があるが、それを乗り越えられるよう、協働して取り組まれている事を聞けて、参考になった。特に私自身、複数のご夫婦で担当させて頂いてるケースがあり、参考にさせて頂きたいと思った。
各ケアマネジャーさんからの様々な事例に対するアプローチの仕方、考え方、方向性の見つけ方などとても参考になりました。また、事例内容ではないのですが、事例発表そのものについても、発表の準備等でも色々な方がおられ、今後の参考にさせてもらいたいと思いました。
医療と介護・多職種の協働により、困難と思われる事例も解決の糸口が見つかると気づかされました。
地域、医療、行政など多くの人が関わっている事例が多く、改めて在宅で生活するには様々な方面から支援することが大切だと感じた。その為にケアマネは、各機関の調整役として重要な役割であるとも感じた。
未婚の精神疾患の息子が介護する事例、お看取りの事例、自分自身にもそのようなケースがあり、たいへん参考になりました。
「数回の入院のたび医療連携を重ね在宅生活が継続できた事例」「在宅にて癌末期を看取るケアマネージャーの役割について」体調がめまぐるしく変わる利用者、その家族を支えていく厳しさ尊さを教えてもらいました。
本人、家族の気持ちの重要性を感じた。もう一度自分の利用者や家族に問いかけてみようと思います。
各事例共、密度の濃い支援をされていて聞きごたえがありました。もう少しパワーポイントの作り方など工夫があると見やすいかとも思いました。質問がフロアから出なかったので出やすい工夫が必要かなと思いました。
安佐北区の事例発表に共感した。全く同じような事例で悩んでおりますが、1歩踏み出して、がんばってみようと思います。
今後はガン末期、精神疾患の方が多くなるそうだ。今日の事例を参考に支援していこうと思う。キーパーソンが息子(独身)のケースも多くなってきたと思う。
在宅のまま亡くなられたケースもあげ、施設入所のケースもあったが、様々な連携を取りながらの報告ばかりで参考になった。
ケアマネ一人で、支援する(できる)ものではないと痛感。やはり関係機関との連携、民生委員さんとの関わりも重要。社会資源を有効に利用できるケアマネになりたいと思います。
各職種との連携(行政、包括、医師等)がいかに大切で、共に考えていただく事で、ケアマネ自身の考えや方向性も整理する事ができ、事例が良い方向に向かう事を再度認識する事ができました。情報の収集、地域での状況等大切にして行く事も、今後大切に考えて行こうと思いました。
ペットと一人暮らしの利用者の事例に興味を持った。本人にとってはペットも家族の一員であり、一緒に入所できる施設がある事を知り参考になった。
往診、薬剤師の訪問等、利用者に応じて導入も身近に感じる事例であり、今後の利用に参考になった。
今回のように事例発表の研修は、自分の経験がない事も発表を通して学ぶ事が出来るので、良いと思った。
5.今後参加してみたい研修会テーマ
本人と介護に消極的で働いていない息子の2人暮らしの困難ケースが大変増えています。是非、他者の成功事例が聞いてみたいです。
60代70代の若い世代のテーマの事例発表が聞きたい。
精神疾患のケアマネジメント
地域包括ケアについてもっとくわしく聞きたいと思います。
アセスメントの方法
「介護支援専門員が知っておきたい病気、症状、その対応と生活上のポイント」みたいな研修会を開いて頂きたい。
医師の視点からケアマネジャーに望む事。医師とケアマネジャーの連携について。
事例検討会やプラン作成、また調査票についてももう一度勉強したい。
気軽に意見交換ができる研修を希望します。
総合病院医師との連携の取り方について。
今回は連携として多職種がかかわっている事例を聞けて勉強になりました。自分自身他職種が何をしてもらえるかしっかり知っているので、そういった研修を望みます。
評価や書類の書き方
介護職・医療職・福祉職からの介護支援専門員の育成。介護支援専門員になった経緯、経過で分野を分けて研修を行って頂けたらと思う。
緊急時の対応マニュアルやその際どうしたらよいのかといった対応方法を教えてほしいです。
近年利用者家族(KP)がうつ病という家庭が多く、本人ではなくうつ病家族との関わりや支援が主になり苦慮することが多々あります。うつ病家族がKPで支援が難しい事例があれば、ぜひお話しを伺い、どの様に対応されたか教えて頂きたい。
小規模多機能などなじみが少ないので職場の現状や活動内容を具体的に知りたいです。
認知症、BPSD、介助者の支援
難病の方への支援の実態・虐待を受けている利用者への支援の実態
ケアマネのコミュニケーション能力(質問力)
住宅改修・住宅改造
ターミナル・生活保護・アルコール依存症
コーチング・厚労省の役員の話・ケアマネ協会の白木会長の話
医療と介護の連携、医師がどこまで協力してもらえるのか?(介護の理解)について聞きたい。
事例発表会が今後も数多くあればと思います。
ケアマネにとって知識として持っておきたい色々な制度(原爆手帳、身障者手帳等)を知って利用者に情報提供していきたいです。
各サービス業者と特色の紹介のようなもの
団塊世代の育ってきた社会的背景や文化・考え方、今後の介護者が抱える社会的な問題について等、社会学的な立場から勉強する機会があれば助かります。今後の日本の高齢化社会が向かっていく方向性についてイメージがもてればと思います。
6.その他ご意見(抜粋)
認知、うつを抱えているご本人ももちろんですが、介護をする家族にそのような病気をかかえているところも多く、本人のケアマネをしながら家族を支えるケアマネとしての仕事も多く、今後はそのような家族が増えてくると考えます。ケアマネの仕事はどこまでやれば良いかと考えています。
事例成功者のケアプランも参考にできたら良いなと思います。