(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会
日時 平成26年2月13日(木)14:00〜16:00
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加者 265名
講演 「地域包括ケアシステムの近未来」
講師 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授 田中 滋 先生


■講演
「地域包括ケアシステムの近未来」

日本の介護保険制度(2000)
適切な処遇を受けていない虚弱高齢者の増大に対処するため(使命)、高齢者介護を社会化し(価値)、尊厳ある自立の支援(理念)を目指した。その成果として、寝たきり・寝かせきりといった老人問題が激減し、10兆円超の市場や雇用を創設した。

高齢者ケア政策(2025)
地縁血縁の弱い高齢者の増加に対応し(使命)、住み慣れた地域での在宅生活の限界を引き上げ(価値)、生活の継続や個別性の尊重、自己能力の活用(理念)をはかる。
少子化、団塊世代の高齢化に伴い年齢構成が歪になっており、今後は過疎地より都会、特に郊外の新興住宅地に大きい影響をもたらす。そこで中核概念として地域ケアシステムが構築された。

地域包括ケアシステムの進化
「住まい」での生活継続を目指すことを基盤とする。生活を支援するとは住居内の家事だけをすればいいというものではなく、過剰な支援はかえって閉じこもりを助長することもある。生活がなければ医療や介護も継続しない。地域によっては、ニーズや資源も異なる。加えて経済格差を始めとする社会福祉、リハビリテーション、日常的な医療、予防など機能は複合化している。
「ケア」については、科学性、プロ性、普遍性に基づき在宅介護サービスを進化させなければならない。例えば家事援助や身体介護から悪化予防につなげたり、行為に加え、身体状況の観察・記録・チェックで数値化、共通言語化する、予後予測・プラン等の共有、多職種協働などである。
現在ある機能や資源のネットワークを作る、地域づくりや資源の育成などを行うといった機能マネジメントや、事業所(経営)単位ではなく、訪問診療・訪問看護など業務単位で展開する地域マネジメントも必要になる。そのためには行政も、人員配置などを事業所単位ではなく、地域で確保する地域包括ケアステーションの創設や、業務を縦割りではなく、横断的に「地域包括ケア」部・課などで、地域にある資源のマネジメントは、自治体のみが果たすことのできる公的業務である。地域包括ケアシステムを育て、介護や保育といった縛りではなく誰もが集える場所を作ること等で、大多数の介護保険未利用者や保険料負担者にもアピールできるものになる。

(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数259人)
とても参考になった 142人(55%) 参考になった 108人(42%)  
あまり参考にならなかった 2人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)   無記入 7人
2.研修会についての意見等(抜粋)
「社会全体から高齢社会にどう対応すべきか」という広い視野の話でケアマネも日々の細かいことのみにとらわれるのでなく大きな視点を忘れない心構えが必要と感じた。
なぜ地域包括ケアが必要なのか?その為には何が大切になるのか?とても理解し易い内容だったと思います。互助の大切さ!
題名を聞いた時には地域包括の近未来…難しそうだと思ったが、先生のお話しを聞いて身近で実践できる事ばかりで近未来は明るいなと思った。
団塊の世代をサポータにするのは良い提案だと思います。高齢者と子供が同じ場所に集まるのは昔の家族のイメージがうかびました。
介護に異職種が関わり、街全体で行えるようになると良いと思った。
2025年問題が分かり易く良かった。
これからのケアマネジャーは自助の力を強める仕事が必要ですね。社会資源を探すのではなく、持っている力をのばす働きかけも必要ですね。
自己能力の活用が必要性を感じる。手厚く介護すれば良いと言うものではない。現在、週に2〜3度も掃除の必要性があるのか。私(達)も仕事をしていて毎日掃除もできない。保険料の使いすぎと感じます。
地域ケアシステムの構築とあり方についての話は誰もが考えていくべき問題だし、取り組んでいく必要があるので参考になりました。
介護保険の本来あるべき姿というか目指すべき方向など、新しい考えが聞けてとても良かったです。
これから先の事を考えていくのに具体的に考える事が出来るヒントを頂いた。
とても心に残る講義でした。これからの支援の仕方、ケアマネジメントの考え方がこれから少し違って考えられるような気がします。地域を作る事を地域と一緒に考えていきます。
次世代まで考えた先を見据えた未来を想像し怖くなりました。次は何をしたらいいのか考えるきっかけになりました。
歴史から学ぶことができて、わかりやすかったです。
地域包括ケアシステムのイメージが少しずつはっきりしてきた。わかりやすい説明ありがとうございました。
植木鉢図の意味がよくわかりました。基盤は住まい、地域。
自助と互助をうまく使い分けないといけないと思った。
参考になりましたが、こちらの勉強不足のためケアシステムのイメージができにくかったように思います。
ぼんやりしていた地域包括ケアの具体的なイメージが少しずつでも描けるようになったかと思います。
先生が言われる地域コミュニティが出来ると思えば、わくわくする気持ちになれました。そのようなコミュニティを作っていきたいです。
今の現実だけではなく、未来を見据えて考えていかなければいけないのだなと感じた。
地域包括ケアシステムというと、医療介護の連携という形をイメージしていて、なかなか実現できないものと捉えていたが、もう少し身近なものであると思えて、これなら自分達でできる事があるという自信となった。
多世代の交流の場を設ける等のケアシステムをどんどん進化させていかないといけない。
地域包括ケアについて何度も話を聞いてきたが、視点がとてもわかりやすく、介護のみにとらわれることはないのだということがよくわかった。
地域包括ケアステーションの考え方は良い事だと思います。今、地域は包括センターと居宅でバラバラになっています(もちろん何かあれば相談はします)。それが一体化すると、地域の事がよくわかり活用もでき良いと思います。
地域包括ケアシステムの成り立ちと今後の方向性が大変理解できました。ケアマネジャーとして利用者との関わり方や助言する場合、本日の講義を参考に行ってきます。
これから高齢社会がピークを迎えるため、自分達が地域を支え認めてもらえるようにしないとならないと思う。
ケアマネジャーは資質をあげて中心的役割になっていくべきと感じている。
地域包括ケアシステムの研修についてはいろいろな場面で受けます。今日の最後の子供を含めたコミュニティをつくることの大切さに気付くことができました。
大きく全体的な話で2時間が短かった。すべてに関わっている田中先生ならではの視点でこの様な話が聞けて良かった。
大変むずかしい問題をかなり短い時間に話されたのでわかりづらいことが多かったが、これからの課題もよくわかった。
今までで一番、包括ケアシステムについて理解しやすかったです。また先生のお話が聞きたいと思いました。
「地域包括ケア」の推進をうたわれて数年経ちますが漠然とした思いでどうなるのか、どう動いていけばいいのか考えていました。昔のコミュニティに戻っていくのもひとつの方法ですね。
内容や流れが分かりやすく時間が少ない程でした。又機会があれば、ぜひ受けたい公演でした。
日本の介護は至れり尽くせりでダメにしてしまう…と前から思っていました。そんな事を思う自分が少し浮いたように思っていましたが、今日、先生の話を伺って「その通り!」と感銘をうけました。
質問する勇気がありませんでしたが、生活支援は家事援助と思っている人が介護保険制度の中では多いと思います。生活支援と身体支援の違いがわからなくなりそうです。生活支援の思いをもう一度考えてみたいと思います。今日はありがとうございました。
高齢化の文明という見方でのとらえ方は新しく面白かった。
互助の身近な方法について気づきをもらった。コミュニティや近所を巻き込んでの相互協力のあり方を考えさせられた。
地域包括ケアの重要性が改めて再認識できた。先進的にやっている市・町をマスコミで知っている程度だが、早急に実施すべき課題であると考えさせられた。
地域ケアシステムの植木鉢の図は始めて見ましたが分かりやすく納得の図でした。
不勉強でここまでシステムの概念が進化していることを知り驚いています。日々の業務に追われて夢が持ちにくくなっていましたが、実現できたらいいな、頑張ろうと勇気を頂けました。先生の熱意に感動しました。
詳しく経緯から話して頂き、よくわかりました。最新のお話が聞けたと思っています。
地域包括ケアシステムは必要と思いましたが、現在の状態では色々のサービス業者が出ています。業者同志の取り合いが行われています。許可される所で包括する姿勢が必要ではないか。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
他職種と連携するための方法、成功例の話を聞きたい。
障害者の福祉サービスについて
2014年4月からの改正点(金額、医療なども含め)について話を聞きたい。
気づかない栄養失調、栄養士さんの取り組みなどの話が聞いてみたい。
補装具の話…装具を作って退院しても使われずに使用していない人が多いのはなぜ?
認知症リハビリの取り組みの話など参加してみたい。
他市町村区のモデル事業の現状を知りたい。
ケアを科学的にするには?
ファシリテーション
ターミナルケアについて、ケアマネジメントについて
認知症
精神疾患の方への関わり方、障害者制度との関わりなど
行政側の考え方、取り組みとの意見交換
医師の方の意見が聞ける機会があると良いです。
家族や本人にとってわかりやすく「介護」に入りやすくなる社会について
ICTについて
来年制度改正に向け、地域包括ケアシステムの進化について
地域包括ケアの実際の取り組みについて
これからの介護保険制度の動向について
高齢者住宅で高齢者自身が自由に選べないケアマネ、医師、ヘルパー事業所が100%に近い現状を、高齢者尊厳と言いながら不思議に思う。研修で聞きたい。