(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会
日時 平成27年3月21日(土)14:00〜17:00
場所 広島医師会館2階「大講堂」
参加者 267名
講演I 「平成27年度介護報酬改定の概要」
講師 厚生労働省老健局老人保健課 課長  迫井 正深 氏
講演II 「地域包括ケアの担い手を考える」
講師 独立行政法人労働政策研究・研修機構 研究員 堀田 聰子 氏


■講演
【平成27年度介護報酬改定の概要】
高齢者が住みなれた地域で自分らしい生活が出来るいわゆる地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みを進めることが改定の骨子である。

そのために次の3つの項目が3本柱として重要である。
1.重・中度の要介護者や認知症高齢者への対応の強化
2.介護人材確保対策の推進
3.サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築

以上の3本柱を実現するため各論について具体的な説明があった。1.については
1)中・重度の要介護者を支援するための重点的な対応
2)活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進
3)看取り期における対応の充実
4)口腔・栄養管理に係る取組の充実
特に平成18年度より新たに導入された地域密着サービスを今後も継続し充実させていく方向である。

【地域包括ケアの担い手を考える】
介護保険制度が始まってから、今日に至るまでの介護職の人材確保対策の変遷の歴史について詳しい分析の説明があった。
介護職員数については、最初の5年間は順調に年10万人毎増加していったが、その後伸び方は不十分となっている。景気の動向に影響を受け、介護職はいまだ専門職として確立していない状態であることが示唆されている。全国レベルではまだ安定して人が入ってくる状態ではないが、地域差が大きく良好な地域もあり都道府県レベルの各地域の特性に応じた対応が大切になっている。数年前の一部の報道により介護職員がどんどんやめるというイメージが作られたが、実際は異なっている。
離職率を比較してみると全産業と比較して決して高いほうではないことが判っている。
例えば、訪問介護員のパートの離職率は全産業の常用労働者のパートと比べおおよそ半分であった。
介護職の人材の確保や育成に関する分析からみると、人材の数が集まる時期にはいかに質を上げるか 資質向上のため、資格要件、研修の見直し等が行われ、サービスの質と専門性の評価が重視された。
介護職の人材が集まらない時期には処遇改善や加算の話すなわち賃金に焦点があてられた。
このようなプロセスを経ながらも2025年の介護スタッフの需要見込みは248万人と想定されるが、現状の見込みでは215万人であり、今後総合的確保方策による押し上げ対策が必要となっている。

地域包括ケアをめぐる潮流について
長寿社会の21世紀をむかえ複数の慢性疾患を抱えながら地域で暮らす人々が増加し、今までの急性期医療中心のシステムでは対応できなくなってきている。また健康概念も大きく変化し、心身の状態に応じた生活の質(QOL)が最重要視され、治す医療から支える医療に変わり、病院から地域がサポートする概念に変わりつつある。これらを実現するシステムが地域包括ケアシステムであり、住みなれた地域での人間らしい暮らしの継続や生活の質の向上を継続させる健康の総合ケアシステムとして期待されている。
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数241人)
とても参考になった 111人(46%) 参考になった 122人(50%)
あまり参考にならなかった 4人(2%)   参考にならなかった 0人(0%)
無記入 4人(2%)    
2.研修会についての意見等(抜粋)
不安も大きく毎日仕事をしておりますが、今回の資料を再度読み返してみたいと思います。
堀田先生の講演をゆっくり聞きたかったです。ぜひ、また次の機会を作ってください。
本質に迫る内容であり、参考になった以上に感動的であり、感じることが多かった。
講師の選定と研修会の時期のタイミングがとても良かったです。
内容が興味深いものでとても良かったです。お二人の講師の先生のお話がとても上手で、時間が足りないのが残念です。
27年度の改定に向けて分かりやすい説明・資料を提示され、理解しやすかったです。
具体的な改定が聞けて良かった。厚労省の方と保険者である市の方とのシンポジウム形式での質問の機会あると、より具体的ではないでしょうか。
迫井課長の2/6、3/3の資料はプリントアウトしていたが、どこから手をつけていいか泣きたい気持ちだったが、アウトラインがつかめて大変助かりました。
介護報酬の改定について十分理解できたわけではないが、大体の流れ・要点は理解できました。資料を再確認したい。
人材確保に関することや労働環境としての考え方等の確保についての話は有意義でした。
4月からの改正に関して、他業種のことも学べて良かったです。
雰囲気は分かったが実践が不安である。
堀田様の話が全て聞けなかったので、またお聞きしたいと思う。
報酬改定についてよく分かった。堀田先生の新幹線トークが凄かった。もっと時間があれば楽しめたのに残念。
地域包括ケアに関する研修は多く受けてきましたが、働く側に焦点をあてたものは初めてだった。介護医療の世界で働くことについて、様々な視点で考えさせられました。
迫井先生は分かりやすく解説されとても分かりました。堀田先生の話はもう少し聞きたかったです。
堀田さんの視点は新しいと感じました。しかし、地域包括ケアシステムは、モデルを押しつけられていると思います。介護に携わる私たちの自立的な考えを持っていくことが、とても狭められていると感じます。特に経済的な面で。
今まで聞いた研修内容と比べても大変良かった。
介護報酬改定の根っこの部分、現状分析からこの改定のエビデンスが理解でき良かった。
なぜその数字になったのかが理解できたが、実践できる事業所がどれくらいあるかなと思った。
通所リハビリの考え方が今回よく分かりました。
迫井課長の講演は何故改正をされたのかの理由を分かりやすく説明され、目的も理解していくことを学べました。
全ての事業所の説明であったため理解が難しかった。
改正の内容についてはイメージできましたが、具体的な理解については詳細な説明会が必要と思います。今回は早いスピードでの説明でしたので、内容の理解にまではついていくことができませんでした。
迫井課長の話も堀田さんの話も時間不足と感じた。もう少しゆっくり学びたかった。
各サービスの概要の説明、少しではあるが納得できた。加算がなぜ必要なのか、どういう意味があるかを学び、担当している方々の生活の中で取り入れながら、良い生活ができるように支えたい。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
制度改正について継続して頂きたい
メンタルヘルス研修
処方された薬を服用せず、捨てる高齢者が多いと研修で学びましたし、実際、利用者様から同様の話を聞きます。ケアマネから医療費の無駄遣いを指摘するだけでは説得力がありません。医師や薬剤師、メディアの力を利用して介護保険だけでなく医療保険の無駄遣いを防止していく方法を検討していただきたいです。
医療保険の改定についても研修してほしいです。
日々仕事に追われているケアマネジャーが元気になれるようなスピリチュアルなことや、応援メッセージの入った講演を希望します。
認知症の方の家族が障害者の場合の対応の仕方
地域の中での居宅のあり方
相談援助技術についての研修
数か月経って、制度をもう少し具体的に説明してほしい。
障害支援制度と介護のあり方
良好な支援、ケアの提供について資料を交えて教えて頂きたい。特にモデル事業が実際行われた際の分析データを知りたいです。
リスクマネジメントの実際(本ではない実際事例)
医療(看取り)等の関係の研修
生活保護対応で身元引受人のいない人の対応のあり方
各種申請書、区への提出書類などの提出方法の取り決め
内容を考えて時間設定してほしい。
27年度の改定の中身について詳しく教えて頂けたらと思います。例えば、算定・加算の条件など。
現場のケアマネの声を聞く機会(日頃の業務内容や苦悩、希望等)
地域包括ケアシステムについて
緩和ケアとターミナルケア
他制度の活用(知らないと損する制度等)
要支援が地域支援事業に移行する事の展望など
堀田氏の話はきちんと時間をとって頂き、もう一度きちんと聞いてみたいです。