(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第15回平成27年度事例発表会
日時 平成27年11月25日(水)10:00〜15:30
場所 西区民文化センター「ホール」
参加者 245名
講演 「介護支援専門員の果たす役割と責務
      〜地域包括ケアシステムを巡る現状を踏まえその存在意義を考える〜」
講師 厚生労働省老健局総務課 介護保険指導室長 遠藤 征也 氏
総評 一般社団法人 日本介護支援専門員協会 常任理事 石山 麗子 氏


【講演のポイント】
ここ15年で社会状況が大きく変化してきている。
地域が主役になる時代になってきており、地域の発展を守っていく中核的な機関として居宅介護支援専門員が誕生した。社会が変化し利用者のニーズが多様化するのに対応するのは当たり前の事になる。ニーズに答えられなければ、社会からの信頼を得るのは難しい。介護保険制度の本質、理念、哲学等、原点を忘れないようにしなければいけない。

◆ コンプライアンスがなぜ必要か
「法令遵守」と訳されることが多い、法令を遵守する事はコンプライアンスの中心とはなるが法律、規制に加え社会的な倫理、規範、一般常識、マナーを守って行動する事すべてを含む。
単に違法行為をしないというレベルにとどまらず、将来的なリスクを未然に防ぐ行動までも含む。自らの行動が信頼に値するように行う行為である。コンプライアンスを実践し、誰もが安心し介護を受けながら暮らせる社会を構築する事が介護サービス事業者の存在意義であり、高い評 価と介護保険制度に対する信頼感を醸成できる。

◆ 介護支援専門員として自覚すべき事
外からはわかり難い介護支援専門の仕事だが、専門性を磨き、言語化して理解してもらえるようにする必要がある。
得た知識がどうなるのか、どのような場合に有用なのか自分で思考する事、この学び考える過程を積み重ねる事により、初めて知識が役にたってくる、まさに身につく、それが教養。教養が備わっていれば、実践を正しく分析(論理的な思考)できる。そのことによって新たな課題を発見でき探究心が生まれる。必然的に資質の向上が図られる。結果、利用者の生活の質が向上する。特に、地域包括ケアシステムの構築に向けては、地域マネジメントの主導者となるべく役割を期待されている。

◆ 今後の介護保険制度の方向性を考える
次回改正では、制度の持続可能性という視点と共に、質の高いサービスの提供と人材確保、医療との連携・機能分担、更なる効果的・効率的なサービス提供を推進するための報酬体系の見直し、簡素化。また診療報酬の同時改正を見据えた課題が想定される。

◆ 居宅介護支援専門員に伝えたい事
ケアマネジャーの仕事は自分の裁量と判断で責任を持ちながら自分の専門分野以外の方々と関わり合いを持つという非常に創造的でやりがいを感じられる仕事。
要介護者は多くの喪失体験(身体機能、友人、家族等)を経ている。生きる意欲を失い稀死願望がある方も少なくない。障害で最も困難な時期を支え、今一度「生きる力」を引き出し、そして残された人生を満足して過ごせるような支援をするのが介護支援専門員である。
すなわちどのような最期を迎えるのか、その鍵を握っていると言っても過言ではない。利用者だけでなく家族の幸せも介護支援専門員にかかっている。
利用者の後ろには家族がいてその後ろには地域がある。誰もが安心して暮らせる社会は地域が豊かである事が必須の条件である。
その意味でも介護支援専門員は地域をも豊かにする役割の一旦を担っていると言える。人を支援し地域を豊かにするそのような魅力と可能性に満ちた仕事に誇りを持って頂きたい。
yaji
やはり「介護支援専門員じゃないと駄目だよね」
    「介護支援専門員がいて助かった」
  と、評価される専門職としての地位を確立して頂きたい!


【事例発表】
〈中区〉 被害妄想が強い認知症の独居高齢者への支援
「自分らしい暮らしを支えるための地域との連携」の必要性を学んだ事例
  居宅介護支援事業所こでまり 藤本 夏子 氏
〈東区〉 自宅環境が不衛生で、家族も病歴があり介護力に不安がある事例
家族の価値観と環境整備の必要性について
  ひなたぼっこ居宅介護支援事業所 朝原 栄二 氏
〈南区〉 同じ志を持つスタッフや家族と走力を結集し支援した事例
  にこやか居宅介護支援事業所 松下 知江美 氏
〈西区〉 「寝たきりにならず自宅での生活を続けたい」と願う独居の支援について
利用者の心を動かし自助力を引き出した事例
  居宅介護支援事業所ゆたか古江 開田 聖子 氏
〈安佐南区〉 生活リハビリを続けることに対して様々な問題対応に苦慮した事例
  ケアプランよりしま 小林 尚子 氏
〈安佐北区〉 目標達成への取り組み
  居宅介護支援事業所三篠園 宗内 洋美 氏
〈安芸区〉 一人暮らし家族同居を繰り返す事例
気ままに生活したい気持ちに添った支援とは
  居宅介護支援事業所チェリーゴード石井城 宮岡  恵 氏
〈佐伯区〉 本人・家族の意向と介護支援専門員として必要と思われるサービス調整との間で悩んだ事例
  生協ひろしま居宅介護支援事業所・広島西 池本 裕子 氏

【総評のポイント】
素晴らしい勇気ある発表をしてもらいました。困難事例は言いたい事が一杯あるが、言いたい事と言うべき事は分けて考えないといけない、事例発表者の方はしっかりと実践の振り返りができ、論理的に表現できているので共有ができたと思う。8事例の全部にチームでアプローチするんだとの思いがありチームアプローチが適切に展開できていた。日頃から他の職種を尊重し、役割を理解し、どんなタイミングで入ってもらうと効果的か連携と学びをチームで行っているのが伝わってきた。自分の職種が当たりまえと思っている事ほど他の職種にはわかりづらいものになる。自分のアプローチに必ず理由づけがあり、判断し言葉を選び言語化できる事が大事になるが、今日の8事例ではそこができていた。日頃から行っていると迷わず抄録に展開できる。自立の定義は明確化されていないが、8事例ともに身体・精神・社会とつながる総合帯の自立支援だったと思う。
新カリキュラムについて、利用者にとってはただ一人のケアマネとしての存在、差を作らないようにしないといけない。本人・家族・周囲の課題を分析する視点をもつベースを知った上で展開していく必要がある。法廷研修は最低限の標準的な目線合わせにある。また知の継承(科学的な知を確立、言語化して共有、同職種間連携)に責任をもち、多職種連携・協働、後身を育てて、より良いものを渡していく責任がある。
 
(アンケートまとめ)
1.本日の講演、総評はいかがでしたか。(回答数176人)
とても参考になった 98人(56%) 参考になった 72人(41%) ふつう 5人(2%)
あまり参考にならなかった 1人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)    
意見等(抜粋)
ケアマネジャーとしての専門性を高める事や立ち位置など考えさせられました。財源不足(国の借金)で子や孫に負担をかけるので、検討課題が多いと思います。法改正についていけるよう学び進めていくよう努力します。
新たに支援専門員としての姿勢を再認識できました。これから取り組む専門性についてまだまだ不足していることが多いと思い知らされました。
難しい内容でしたが、分かりやすく説明してくださり、とてもよく伝わりました。ケアマネとして意欲を持ち、資質を向上していきたいと思います。いろいろなケアマネがいると思いますが、介護保険サービスをよりよいものにしていくためにはマネジメントは必要です。個々の事業所ではトータル的な関わりはできません。
CMの原点の再認識ができた。根拠に基づいた知識を積み重ねて社会貢献したいと思った。現場の情報・意見を言える場があることを初めて知った。CMの声がもっとあがるようになればいいと感じた。
ケアマネの仕事がなくなってしまうのではと危機感を感じました。自分を磨き、成長していくことが大切なのだと思いました。
自分が生活していく上では5年先10年先、長くて20年先を見据えて行っています。仕事をする時はせいぜい2〜3年先だと思います。介護保険の運営を考えるには30〜50年後の日本を考えるというのが分かりました。総評も心打たれる内容でした。
厳しいご指摘もあり、襟を正す思いでした。今後変わっていく介護保険制度について頭の中に入れて、地域連携や自立支援になる支援をしていきたいと思いました。
今後の国の方向性(介護支援専門員に求められるもの)が分かりやすく話されていた。
改正の意味や社会保障全体の中で考えていく視点について、わかりやすく説明していただけたと思います。
2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数177人)
とても参考になった 67人(38%) 参考になった 94人(53%) ふつう 14人(8%)
あまり参考にならなかった 2人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)    
意見等(抜粋)
困った事例がある場合、地域包括・民生委員・利用者・家族・担当事業者と会議をもつことの大切さが分かった。
自分の担当している事例でも、苦慮し日々思い悩むこともありますが、本日事例提供された方も模索しながら本人・家族を支える為に支援されておられることに非常に勇気をもらい、また前向きに検討できるようになりました。
同じような利用者さんの事例があり、参考になりました。今後の業務に活かしていけたらと思います。
皆さん大変な事例を自立支援に結びつけられる支援がとても参考になった。
徘徊高齢者SOSなど知らなかったので、そういう事も気付き良かったです。サービスの少ない地域での支援の様子も分かりました。
皆さんの事例を通して、本人だけでなく最近は家族の支援の大変さ、重要性を感じました。目の前の問題解決だけでなく、利用者・家族の自立支援に向け、目標を持って関わっていきたい。
地域包括・医療・地域連携・独居・認知症と多くのキーワードが出て、取り組みがしっかりとなされていることが実感しました。
事例の準備から発表までご苦労があったと思います。ありがとうございました。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
成年後見の進め方(本人が納得した上での進め方)
精神疾患の理解と支援の進め方
事例発表は今後もぜひ参加したいです。
予防プランについて

身体障害者の方が介護保険サービスの利用者になった時の法的な面と、精神的な面での支援について

医療についての研修
看取りについて
医療連携の研修はいろいろな所で行われていますが、一歩足を踏み入れた話をお聞きしたいと思います。
第6期に向けて今後の介護保険制度の動きについて