(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会
日時 平成28年2月18日(木)14:00〜16:00
場所 JMSアステールプラザ「中ホール」
参加者 209名
講演 介護支援専門員研修について
講師 一般社団法人 広島県介護支援専門員協会 常任理事 望月 マリ子 氏


1. 介護支援専門員研修見直しの背景
広島県の総人口は、平成22〜37年の15年間で約19万人が減少する。
これは東広島市の人口に値する。
広島県内市町のH22〜52年の高齢者率の増加割合は、広島市、福山市、東広島市、廿日市市、府中町、海田町で約1.4倍以上となっており、都市部での急激な高齢者の増加が見込まれている。

広島市内をみると、高齢者人口は平成37年には309,427人が見込まれる(高齢化率26.2%)。4人に1人が65歳以上となり、総人口の15.4%が75歳以上の後期高齢者となる。
年齢階層別要支援・要介護認定率の割合は、75歳を超えると認定率が高くなり、85歳以上では6割以上の方が認定を受けている。
要支援・要介護認定者は、平成27年度で54,966人、認定率が19.4%であるが、平成37年度には認定者数が76,275人、認定率が24.3%となっている。
また、年齢階層別認知症出現率は、75歳を超えると出現率が高くなり、85歳以上になると45.5%が認知症を発症する見込みとなっている。

このような背景のもと、「どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会」の実現のために、在宅医療の充実と地域包括ケアシステムの構築がすすめられている。
ケアマネジャーは、在宅医療連携拠点・地域包括支援センターとともに、医療から介護への円滑な移行促進、相談業務やサービスのコーディネートといった包括的マネジメントの中心的な役割を期待されており、更なるケアマネジメント強化がもとめられる。

2.介護支援専門員の研修概要
「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」は、中間的な整理(H25年1月7日)の中で、主な検討すべき課題を示し、具体的な改善策があげている。

<具体的改善策>
○ケアマネジメントの質の向上
  多職種連携、目標達成状況を確認するための新様式の構築(課題整理統括表など)
○介護支援専門員研修等の見直し
  実務研修従事者基礎研修の必修化や研修カリキュラムの見直し(認知症やリハビリ、看護、福祉用具等の科目の必修化など)
  研修指導者のためのガイドラインの策定
  介護支援専門員実務研修受講試験の受講要件見直し
  主任介護支援専門員となる研修修了後の評価導入、更新制の導入、初任ケアマネジャーへの指導・支援など
○地域ケア会議の機能強化
○自己研鑽の努力義務の規定の新設(H27年4月より施行)など

研修制度の主な変更点
1.研修制度時間の大幅な増加(平成28年4月1日〜)
1)実務研修 は44時間から87時間に増加(実務従事者基礎研修の統合あり)
2)専門研修Tは33時間から56時間に増加
3)専門研修Uは20時間から32時間に増加
4)主任介護支援専門員研修は64時間から70時間に増加
5)主任介護支援専門員更新研修が新規創設され46時間が追加
  主任介護支援専門員研修及び主任介護支援専門員更新研修の修了者に交付する修了証明書に有効期間が設けられる。その期間は5年となる。
  主任介護支援専門員更新研修の修了者は「介護支援専門員更新研修」が免除される。
2.主任介護支援専門員による現場での実務研修等の実施
居宅介護支援事業所の主任介護支援専門員の役割を明確化させるため、主任介護支援専門員に更新制を導入し、『地域の介護支援専門員に対する現場での実務研修の実施』や『介護支援専門員のネットワークの構築』といった役割を担うこととなった。
  @ 平成28年度から実務研修に基礎研修を含め、実習を導入する。
  A 実習を新たに導入し、時間数を44時間から87時間へ拡大する。
  B 主任ケアマネによる実習指導(スーパービジョン)を特定事業所加算の要件に追加
3.主任介護支援専門員研修の『受講要件の変更』、『更新研修の新設』
  1)主任介護支援専門員研修の受講要件の変更点は下記のとおりである。
  【現行】介護支援専門員の業務に関し十分な知識と経験を有する介護支援員。
  【 新 】 利用者の自立支援に資するケアマネジメントが実践できている介護支援専門員。
  2)主任介護支援専門員更新研修
  主任介護支援専門員研修修了書の有効期間が概ね2年以内に満了する主任介護専門員 かつ下記の@〜Cのいずれかに該当(+都道府県において実情に応じた受講要件の認定可)
  @ 介護支援専門員に係る研修の企画、講師やファシリテーターの経験者。
  A 地域包括支援センターや職能団体等が開催する法定外研修等に年4回以上参加した者(生涯学習認定制度の活用)。
  B 日本ケアマネジメント学会等が開催する研究大会等において、演題発表等の経験がある者。
  C 日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャー
  D 主任介護支援専門員の業務に十分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者(広島県では、ケアマネマイスターとする予定)。

3.研修ガイドライン
研修実施主体である都道府県の『研修実施の実行性の確保』と『研修実施の支援』のため、介護支援専門員研修改善事業が行なわれている。
具体的な事業の内容として、効率的・効果的な研修の実施方策を検討する「研修向上委員会」の設置や法定研修ごとにガイドラインを作成し、ガイドラインに沿った研修実施を促進。
また、指導要領・指導技術等に基づく指導者養成研修を実施している。

研修向上委員会では、都道府県・研修機関・研修実施団体と連携を図りながら、より良い研修実施を目指す。ガイドラインには課目ごとに到達目標、分野、伝達方法が示されている。
PDCAサイクルを活用し、事前・事後・3ヶ月後のフィードバックが行われる。
受講者と事業所・包括支援センターが連携し達成度合いの評価を行っていく。
研修記録シート(ポートフォリオ)の作成が必要となり、生涯教育的な要素が組み込まれている。
記録シートを積み上げていくことによって成長を促して行く。

4.生涯学習制度の活用
1)生涯学習制度創設までの経過
平成20年より、広島県と広島県介護支援専門員協会が共同で、ケアマネジャー資質向上を協議。専門職として自ら学び、その質を高めるための「生涯学習の仕組み」が必要と考え、生涯学習(研修単位認定)制度についての専門部会を設置し協議を重ねてきた。平成22年度にはモデル事業を行い平成23年9月より本格的に運用が開始した。
2)生涯学習制度の概要
研修単位として認定され、研修受講による段階(各コース)が設定されている。
生涯学習手帳が配布され、介護支援専門員が自ら研修履歴の管理できる仕組みになっている。
私たちが目指すのは“地域包括ケアで高齢者の生活を支える介護支援専門員”、“社会の問題を行政と共に解決の方向へ導く介護支援専門員”、“エンパワーメントを引き出す介護支援専門員”である。
生涯学習制度も積極的に活用しながら、専門職として知識や技術を磨き続けてほしい。

(参考)ガイドラインの取得方法
広島県介護支援専門員協会ホームページよりガイドラインが取得できます
(「ケアマネの輪」で検索⇒ 介護保険⇒ 【資料】介護支援専門員専門(更新)ガイドライン)
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数191人)
とても参考になった 72人(37%) 参考になった 122人(59%)
あまり参考にならなかった 2人(1%)   参考にならなかった 1人(1%)
無記入 4人(2%)    
2.研修会についての意見等(抜粋)
座っていて学びのない研修を受けるより、自分の仕事のスキルをupできるようにアセスメントがきちんとあげれて意見を拾ったり、きちんとプランニングできケアマネジメントできることが大切だと本当に思う。現場でしっかりとお客様のために働けるケアマネでありたいと思う。
特定事業所加算の考え方が理解できました。自分達の質を上げる為には努力が必要。
新しい研修体制について、理解することができて良かった。
今後の主任CMの役割・あるべき姿がよく分かった。事業所として、地域に貢献できるよう体制を整えたい。
ケアマネ経験がまだ浅いため、今後、法定研修の時間が増えるのであれば、知識をより得ることができるため賛成です。
主任ケアマネとしての役割と研修を通して自覚していくことを、しっかり考えていかなければいけないと思いました。それと同時に、自分の置かれている状況に少し不安を感じます。
介護支援専門員が担っている責任を重く感じました。地域で今後役立てるケアマネになれるよう努力していきます。そのためには、今後も多くの研修を受けてスキルアップしていきます。
今後CMの資質向上を目指したいと思います。また、協会への協力(アンケート等)も惜しまずしていこうと思いました。
勉強不足を痛感しました。ケアマネの仕事の数値化はどのようにしたら良いのか考えさせられます。
主任ケアマネ更新要件の研修は、生涯学習制度該当の研修でないといけないのでしょうか?他団体(医師会等)開催ではどうか、参加の証明はどのようにするのか、もう少し詳しく知りたいです。
ハードルの高い主任CM更新に不安がある。質の向上はもちろんで、勉強の継続は個々のCMは実行し頑張っている。今後の動向に目が離せない。
資質の向上で高齢者の支援、社会の問題を行政と共に解決、地域のマンパワーを作っていく等の目的がはっきりと分かって良かった。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
認定調査についてと、支援プランの勉強会に参加せねばなりません。よく身に付く研修をたくさん受けていきたいと思います。
広島県や市で開始された、総合事業の現状を知りたい。
医療知識
生活保護に関する知識
障害福祉に関する知識
地域包括ケアシステムについて
医療連携について継続的に行えるような研修を望みます
退院時のケアマネジメント
事例検討会
KJ法を体系的に学びたい
ケアマネの業務につき、まだ半年です。何でも、どんな研修でも行きたい気持ちです。
認知症とケアの最新知識
特定事業所として実習生の受け入れについて
地域のインフォーマルサービスの構築をしているような実践事例があれば知りたいです。