(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第18回平成30年度事例発表会
日時 平成30年12月6日(木)10:00〜15:30
場所 JMSアステールプラザ 中ホール
参加者 277名
講演 「適切なケアマネジメントと未来ある介護支援専門員の姿」
講師 国際医療福祉大学大学院 教授 石山 麗子 先生


【講演】
「適切なケアマネジメントとみらいある介護支援専門員の姿」
制度論・ケア論から適切なケアマネジメントについて言語化しながらご講演していただいた。
適切なケアマネジメントを積み重ねることで未来ある介護支援専門員の姿になる。どのような未来があるかは私たちの日々の行動の結果。適切なケアマネジメントとは公式の定義はない。
制度論(法令順守)、ケア論(自立支援の技能)が尊厳の保持・自立につながるのではないか。
適切なケアマネジメントであるかどうかはどう判断するのか?根拠あるケアプランを立てる必要がある。根拠があるプランとは他のケアマネが見てもその根拠がわかるプランを作成する必要がある。
根拠とは、専門職としての判断・行動は3つの側面からの根拠。
1.法律、2.倫理、3.科学。3つの根拠に基づき説明できれば実現可能性・質が高まる。利用者・家族には適切な知識を持ち、メリット・デメリット・リスクを考え、選択・決定。
多職種では他職種の思考過程を理解した倫理的コミュニケーション。
同僚・後進には同職種間の共通言語・認識に基づく連携、育成がより良いケアの選択・実行につながり利用者本位になる。
居宅介護支援経過についても自らの行動は記録に示す。
「書類」があっても必ずしも適切な「記録」があるとはいえない。
「第三者にわかる記述」がある場合に「記録がある」と言える。「第三者にわかる記述」は何が重要情報か自覚できている場合に可能となる。
制度論を適切に実行するには、@必要事項を正確に把握し、A自事業所の環境にあてはめ、実行可能な方法や環境をつくって可能となる。
ケア論からケアマネジメントにおけるアセスメント/モニタリングの標準化。脳血管疾患及び大腿骨頚部骨折がある方のケア。脳血管疾患に対して行うケアの方針は、@再発予防A生活機能の維持・向上。
大腿骨頚部骨折の利用者に対するケアの方針は、@再骨折の予防、A骨折前の生活機能の回復となる。
疾患別のケアマネジメントの構成と活用方法は基本ケア(高齢者の機能・生理)が前提。その後、疾患別・期別のケアとなる。疾患別・期別のケアは脳血管疾患(T期・U期)、大腿骨頚部骨折(T期・U期)と一覧表で提示されている。
ケアマネジメントの標準化とは、一定条件の範囲内における標準化である。
標準化とは最低限想定されるケアである。ケアプランは標準化で示した想定される支援内容だけで作成できない。
標準化は個別性を否定するものではなく、むしろ利用者の望む生活を下支えする基礎となる。
標準化はケアマネジャーごとの想定する支援内容のバラツキを最小限にとどめ、利用者の立場からみれば最低限説明・提案されるべき情報を示すもの。
標準化は育成者(主任ケアマネ)ごとに指導する内容のバラツキを最小限にとどめ被育成者の立場からみれば最低限説明・指導されるべき情報を示すもの。

【事例発表】
〈安佐北区〉 サービス拒否も「自己決定」として本人の意思を支持し続けた事例
  かざぐるま居宅介護支援事業所 酒井 美智子
〈安芸区〉 本人の強みを引き出す関わりにより、成功体験を積み重ねていき、社会参加につながった事例
  ひびき居宅介護支援事業所 上峠 麻亜弥
〈佐伯区〉 生活歴や価値観が違う場合の信頼関係の築き方
 〜全ての人が安心して暮らせる社会へ〜
  石内慈光園居宅介護支援事業所 岡本 巳査子
〈中区〉 若年性認知症の方への支援
 〜普通の生活を実践するための取り組み〜
  やまびこ居宅介護支援事業所 篠田 辰弥
〈東区〉 病状告知に対する家族の戸惑いと終末期の支援
  太田川病院居宅介護支援事業所 三分一 あい
〈南区〉 40代で脳梗塞により障害を負った方の支援を行う中で、介護以外の分野との連携により、総合的な自立支援が可能となる事を学んだ事例
  いでしたケアプランセンター広島南 岡田 健
〈西区〉 認知症高齢者を地域で支えることの必要性
 〜地域ケア会議を活用した事例を通して〜
  サンキ・ウエルビィ介護センター本店 松本 栄治
〈安佐南区〉 在宅での暮らしの限界を迎えた際の介護支援専門員の気持ちの揺れ動きと暮らしの場が変わっても利用者らしく暮らすための支援について
  野村病院居宅介護支援事業所あさみなみ 梶本 耕太郎

 
(アンケートまとめ)
1.本日の講演、総評はいかがでしたか。(回答数247人)
とても参考になった 195人(79%) 参考になった 50人(20%) ふつう 2人(1%)
あまり参考にならなかった 0人(0%)   参考にならなかった 0人(0%)    
意見等(抜粋)
頭の中で分かっていても、言語化することは非常に難しい。今後、しっかり言語化することを心掛け、周りの方に分かりやすく説明できるよう心掛ける。
介護支援専門員として、現在、必要なこと、大切なこと、今後を見据えて、改めて必要なこと、大切なことと学び、考える非常に良い機会となりました。ありがとうございました。
視点や考え方を再考する良い機会となりました。
石山先生の講演は一方的ではなく参加型だったので、自分の振り返りと、改めてケアマネジメントがよく分かり、支援経過の書き方の参考になった。
記録の書き方も含め、日々の業務を改めて見直しをする必要性を感じた。
法令をきちんともう一度読み直さなければと実感した。自分なりの解決をしていたところがあるので、基本に立ち返りたいと思う。
運営基準に基づいたお話で、とても参考になりました。
とても分かりやすく勉強になりました。法令遵守の視点を意識したことはありませんが、記録には必要な視点だと思いました。
3つの側面からの「根拠」を掘り下げて考えながら、未来のケアマネジメントを考えながら支援していきたい。
新人の方の指導に悩んでいましたが、まずはケアの方針を決める、伝える事だと思いました。
聞くだけでなく参加型の講演がとても良かったと思いました。
ケアマネジメントの標準化について、これまで実践したことを言語化することで、ケアマネジメントの質を向上、ケアマネの質の向上ができることを感じた。今後の業務の中で生かしていきたい。
演習を行いながら講演をしていただき、自分の傾向を踏まえながら、日々の実践を振り返ることができた。各事例を分析していただき、明日からでも活用できるものを多く得ることができた。
2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数250人)
とても参考になった 146人(59%) 参考になった 98人(39%) ふつう 6人(2%)
あまり参考にならなかった 0人(0%)   参考にならなかった 0人(0%)    
意見等(抜粋)
介護保険にとどまらない就労支援や、本人の社会貢献への参加などの多様なケースの発表があり、「ケースマネジャー」としての介護支援専門員の新たな役割を認識できた。
とても良かったです。今までで一番どの事例もすばらしかったです。
介護支援専門員だけで問題を抱え込むのではなく、地域の皆様や多職種との連携が大切であり、日々の関係づくりの大切さを感じられました。
認知症の方への様々な取り組み、支援を拝聴でき、大変意義のある時間となりました。また、「研究発表」についても、非常に参考になりました。
それぞれの発表と対応に頭が下がりました。自分も改めて頑張ろうと思いました。
地域社会との共存を図るケースが多く、その人らしい生活、自己解決を大切にして支援をしていく必要があると思った。
初めての参加でしたので、様々なケースがお聞きでき、良かったです。
発表されたケアマネジャーが介護保険制度の枠だけの支援でなく、幅広い知識や支援を行っていることが分かりました。とても勉強になりました。
信頼関係構築の重要性、地域共生社会の構築の必要性が理解できた。また、多職種連携。寄り添う支援を行っていきたい。
以前に比べ、事例の内容が色々な視点からの事例になっており、どの事例も勉強になった。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
ひきこもりの子との同居、精神疾患のある家族との同居、2号保険者世代の行き場やサービスの開拓。
身体障害者の支援について。
ケアマネジメントの標準化について。
医療、介護報酬改定について。
就労支援について。
看取りの勉強。
また、石山先生の講義が聴きたいです。
記録の取り方。減算にならない最低限の書類の整え方。
今回同様、様々な事例を聞ける研修をもっと受けたいと思います。もう少し少人数で、事例について意見交換でいる場も参考になると思いました。
成年後見について。
ソーシャルキャピタル蓄積法。
事例検討会をもっとやってもらいたい。