(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会
日時 平成31年2月9日(土)14:00〜16:00
場所 広島医師会館 2階 大講堂
参加者 119名
講演 介護保険から地域包括ケアシステム そして地域多世代共生社会へ
講師 一般社団法人 日本ケアマネジメント学会 理事
公立大学法人 埼玉県立大学 理事長
慶應義塾大学 名誉教授  田中 滋 先生


1.歴史上からみた社会的分断の背景と課題
多世代で家族が共に暮らしていた時代では、出産から看取りまでのすべてを自宅で行い、互助が保たれていた。しかし、近代社会では、経済水準の向上に伴い、地縁血縁から切り離された賃労働者が増加した。
そのため、互助の関係が分断され、共助の創設として社会保険制度が導入された。20世紀前半に国の栄養水準が向上し、医療の普及により、急性感染症や結核による乳幼児や若者の死亡数が減少した。
また、皆保険制度の発足に伴い、老人医療の給付率が増し高齢者の死亡率も低下した。その結果、高齢者世帯の増加と特に女性の死亡率の急速な低下に伴い、健康寿命後の支援を必要とする高齢者の増加が課題となっている。

2.地域包括ケアシステムの深化
2025年以降、死亡数は170万人に増加すると見込まれている。2040年には85歳以上の人口が2.5倍に増え、少子化により生産年齢人口も減少の一途をたどる。
地域包括ケアの対象は、看取りや中重度の要介護者、そして軽度の要介護者や虚弱高齢者ばかりではない。乳幼児や障がい者とその家族、医療的ケア児、複合的福祉ニーズを持つ、虐待・セルフネグレクト・貧困状態にある人々を地域の中でどう支えていくのか、どのようなまちづくりをしていくかが今後の課題であり、地域共生社会について考える上で重要になる。このため、異なる組織に属する多職種が協働していく中で、社会福祉士に期待される役割は大きい。
地域包括ケアシステムの主役は住民である。団塊世代の特に男性が活躍できるような生活の拠点づくりを進めていく必要がある。 自宅内生活は自立であるが、買い物などができない85歳以上の人が増えてくる。ケアマネジャーとして、改善予測や悪化予測を含めたアセスメントを行い、保険給付の在り方、個別給付のみならず地域支援や事業給付など、地域単位での給付についても検討していくことが必要だと感じている。

3.地域共生社会・多世代共生社会に向けて
共生とは、もたれあいや思想統一ではなく、多世代で距離を保ちながら一緒に生活することである。ケアマネジャーとして今の日本の現状を知り、地域共生社会の中で何が担えるか考えていく必要がある。
高齢多死社会を迎える中で、少子化からの脱却策も併せて考えなければならない課題である。健康寿命を進展するために各職種でできることは何か、利用者に対応した地域事業とは何か、それぞれのケアマネジャーが自分の強みを活かしながら活動していくことが必要になってくる。

 
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数119人)
とても参考になった 59人(50%) 参考になった 53人(44%)
あまり参考にならなかった 5人(4%)   参考にならなかった 2人(2%)
2.研修会についての意見等(抜粋)
地域の活性化の意味が具体的に分かった。
歴史から、これからの課題について、分かりやすく講演してくださり、良かった。今後、私たちが少しでも生活しやすい地域になるよう関わっていきたい。
グランドヒストリーの視点、興味深く聞かせていただきました。今後、私たちのすべきことを示してくださったと思います。自分の強みを強くしていく!今日は来て良かったです。
地域社会の給付の考えが大変参考になった。
大変感動しました。この分野で働きながらも、ずっと少子化問題は気になっていました。次は施策として取り組むことになるという言葉を聞いて、涙が出るくらい嬉しく思いました。虐待の問題も心苦しくなる状態ですが、未来の明るさがやっと見えました。
新しい課題が次々と出てくるなかで、少しでもクリアできるようになれば…と思って、仕事に取り組みたい。
自身も高齢化になりつつあり、地域社会での支え合いを改めて感じた。
地域、社会資源が今後もっと重要になり、開発が必要であると気付いた。
人口推移の流れとともに必要であることが変わること、これから必要であるものへの準備がいること、参考になりました。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
地域の活性化の事例等。
生活からの疎外を防ぐ地域支援事業の給付を掘り下げてください。
リスクマネジメント。実際に起きている問題、訴えられた介護現場について、裁判例等、ケアプランにあげておいたほうがよい対応等。
コミュニティーナースなど、地域で活動している役割について勉強してみたい。
2025年問題の次の2040年問題について
精神疾患についての研修、その家族との関わり方(家族も精神疾患の場合)
視野の拡がる講習を受けたい。
地域共生社会でのケアマネジャーの心構えと役割。
地域など社会資源の開発のしかた。
自立支援、包括的支援についてもっと知りたい。社会資源との関わり方なども勉強したい。
実務に関する研修会をやってほしい。