(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第19回令和元年度事例発表会
日時 令和元年11月21日(木)10:00〜15:30
場所 広島医師会館 2階 大講堂
参加者 200名
講演 「スーパービジョン実践〜スーパーバイジー・スーパーバイザー相互の成長〜」
講師 日本福祉大学大学院 客員教授 野村 豊子 先生

【講演】
「スーパービジョン実践〜スーパーバイジー・スーパーバイザー相互の成長〜」

スーパービジョンというのは上からではなく、スーパーバイジーとスーパーバイザーの相互の成長のために、そして何のためにスーパービジョンを行っているか? それは利用者のケア、ご家族、そして地域、組織等々の多面的な意義があるということを含め、スーパービジョンの実践についてご講演していただいた。
スーパーバイザーに必要なものは、知識・技能・技法・技術、そして最も大切なことは価値観であり、スーパービジョンの目的・意義や機能、役割に関する理解、組織や業務、自らの立ち位置についての理解も求められる。また、スーパービジョンの本質は、スーパーバイジーが悩みながらも相談者を支援しようとしている姿を後押しし、スーパーバイジーが自らの援助の仕方を評価する視点を持つことであり、決して監査や査察ではない。なお、スーパーバイザーが自身の経験をいくら助言してもスーパーバイジーの宝にはならないことが多く、スーパーバイジーは自分の短い経験の中から様々な学びを振り返り、宝のきっかけを見つけ出して、その磨き方をスーパービジョンの中で学んでいくことが重要である。スーパーバイジーが自ら考え気付きを得て、そして自らの援助活動を振り返るようになっていくことをセルフスーパービジョンと呼び、スーパービジョンは行きつくところセルフスーパービジョンになっていくことである。
スーパービジョンには組織の事業計画を実施しモニタリングや修正、評価を行い、職員の力量にあった業務の割り当てや調整を行うなどの管理的機能や、スーパーバイジーが効果的・効率的・倫理的に業務を遂行するための知識・技術・価値・倫理を習得するための教育指導を行う教育的機能、スーパーバイジーのストレスを軽減し安全な雰囲気づくりや他の職員と関係構築の支援を行うなどの支持的機能、そしてチーム内での役割と責任について調整し明確にする仲介機能の4つの機能があり、スーパービジョンの成功とは、スーパーバイジーがスーパーバイザーの言葉をしっかりと受け止め、自らの思いを話し、感情だけではなく理解を深めて言語化できるようになること、そしてスーパーバイジー自身の頭の中に方向性を見つけ出すことができるようになることにある。そして、スーパービジョンは何時でもスーパーバイジーとスーパーバイザー両者にとって得難い学びの時であり、スーパーバイザーへの研修やスーパーバイザー同士の研鑽、さらにはスーパーバイジーとしてスーパービジョンを受ける機会等を通して、スーパーバイザーの実践力を高めていくことができる。
新しいスーパービジョンの話は非常に惹きこまれる内容であり、また主任ケアマネジャーの研修のあり方についても多くの助言をいただけるなど、職場内での育成における注意点、そして自らの成長を促すヒントが沢山得られた講義であった。

【総評】
個別の尊重、インフォーマルなネットワークを含めた社会資源の捉え方、生活拠点の重要性、連携の重要性等がすべての事例に盛り込まれており、身体・精神・心理・社会・経済・環境面を含めた多義的なアセスメントに尽力しているケアマネジャーの姿も見えた。
インフォーマルネットワークとしての家族を考えると家族の力というのは病をかかえることで逆に培われていく家族の力に圧倒されながらもそれを支えているケアマネの姿もいくつかの事例にあったように思う。介助負担というものは介護満足やストレングスにまでも変わってくる。利用者の病の進行とも絡め合わせながら、人間が生きるということに、こころを寄せながらケアマネ自身も成長されている様子もいくつかの事例で見えた。
また、自分の自身の成長をまとめていた事例はまさにセルフスーパービジョンであった。すべての事例が各期に分けてまとめられたものであったが、スーパービジョンとも絡めて言うと、過去の事例ではなく進行形の事例が望ましい。各期の焦点の推移をどの辺においているのかというのはとても大事なまとめ方になり、また、別の焦点で捉えてみると違ったカタチで見えてくることもあり、これが事例検討の醍醐味とも言える。
事例をまとめるということとスーパービジョンで振り返ることはイコールではないが、事例をまとめる際にスーパービジョンの視点を入れていくことで、セルフスーパービジョンの観点が深まっていくように思っている。
 
(アンケートまとめ)
1.本日の講演、総評はいかがでしたか。(回答数158人)
とても参考になった 92人(58.2%) 参考になった 55人(34.8%)
ふつう 7人(4.4%)  
あまり参考にならなかった 3人(1.9%) 参考にならなかった 1人(0.6%)
意見等(抜粋)
スーパービジョンとアドバイスの違いについて学ぶことができた。
自分はスーパーバイジーの立場ですが、まずは自己の振り返りをして、スーパーバイザーの方の期待に応えられるケアマネジャーになりたいと思います。
少し難しかったが、スーパービジョンの本質が多少は理解できたと思う。
スーパービジョンを実施する上での視点、スーパービジョンの機能について意識し、日頃の業務に生かしていきたいと思いました。
つい、こうした方が良い、こうすることでこのような結果につながる可能性があると業務の中で言ってしまうことがある。自分は気付かないうちにそうしてしまっているんだなと思い、今日の講演は自己覚知をする機会となりました。ありがとうございました。
スーパービジョンの本質がつかめないまま、ただのティーチングになっていたことに気付かされました。本質を捉えることの大切さを忘れないようにしたいと思います。
野村豊子先生のお話がおもしろく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。特に「人間の学習や行動変化に関する知識(経験学習の意義の理解、リフレクティブプラクティスの理解)」「バイジーとバイザーのパラレルな関係」にハッとさせられました。
もう一度頭を整理してレジュメを読み直します。
スーパービジョンの新しい視点や考え方が学べ有意義でした。
分かりやすい話と資料でした。ゆっくりと話していただき、伝わってきました。
スーパービジョンの重要性をあらためて感じています。ことなくスーパービジョンの実践で、バイジー、バイザーとなり、自分自身を成長させたいと思いました。
事例のまとめ方についての話。きれい事でまとめないようにという話、リアルな思いを書いた方がよい参考になりました。スーパービジョンについて今まで研修した内容とは少し違い、とても精神的な面での大切さを学習しました。
自分がスーパーバイジーの経験が少ない。バイジーがわかってスーパービジョンがわかるという言葉がひびいた。
新入社員に対して、今まで自分がバイザーをしていた事を振り返る思いでした。バイザーの形を考えさせられました。
スーパービジョンについて思い込みがあったことに気付かされました。
2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数160人)
とても参考になった 91人(56.9%) 参考になった 65人(40.6%)
ふつう 3人(1.9%)  
あまり参考にならなかった 1人(0.6%) 参考にならなかった 0人(0.0%)
意見等(抜粋)
関わりや病気の進行などのきっかけで家族・支援者の力が成長していく過程があって、とても参考になりました。
支援過程で感じられた葛藤や悩みなどに共感しました。
「自宅が一番」という固定概念を持ってしまうが、誰と一緒にいるかという本質の大切さに気付かされ、おもしろい事例でした。
多くの事例発表会の中で、「初心を忘れず」という思い、振り返りが自分自身にも出来て良かった。
いろいろな事例を聞いて、とても勉強になった。今後のケアマネジメントにおいて、自分の観念にこだわらず、それぞれの場面、利用者さまの意向を尊重していきたいと思った。
介護支援員として介入できることは多岐にわたると改めて思いました。どこまでやるかという線引きの難しさも改めて感じました。自分もしっかり自分を見つめ直しながら事例にかかわっていきたいと思います。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
8050問題や障害者、65歳問題、引きこもりの家族を抱えた高齢者の支援
在宅での看取りについて、医療との連携について、認知症について、施設と在宅での介護保険の使われ方について
野村先生のスーパービジョンについて、もう少し深く学びたい。
医療制度、介護保険制度改正について
認知症(若年性)
薬に関係した研修を受講できればと思います。
様々な制度に対する研修(生保、市の制度など)
他職種とのチームアプローチについて
要支援者の事例発表会
アセスメント方法等の研修があれば参加してみたいです。