(研修会報告)
テーマ 居宅介護支援事業者研修会 第20回事例発表会
日時 令和3年4月15日(木)14:00〜16:30
場所 広島県医師会館ホール
開催方法 ハイブリッド開催
参加者 205名
【事例発表】
(西区) 小さな気づきを多職種で共有し、達成可能な目標を設定する事で成功体験を重ね、在宅生活が改善した症例

荒木居宅介護支援事業所  尾崎 友哉

《総評》 脳卒中(脳血管疾患)の支援は再発予防が大切(高血圧、服薬管理)。多職種チ−ムで情報を共有され、本人の意欲を引き出せている。厚労省の標準化モデルである落胆体験からニーズをデマンドとし、本人にわかりやすい言葉で目標設定し成功体験を重ねる事で、生活の質の向上を意識した、本人主体のケアプランであった。
(安佐南区) 看取り期の心の平穏を支える 〜傾聴と地域資源、ICTの活用〜

アットホーム介護相談室  山本 尚一

《総評》 肺癌の看取りの支援。看取りは、本人の思いを充分にくみ取れないまま、終えてしまう事が多いが、肺癌と共に生きる辛さに寄り添い、最後を迎える方の5つの葛藤から受容までプロとしての視点を持ち、支援できた事例。コロナ禍の中、アナログと地域資源を有効に活用している。
(安佐北区) 他者を信用できず、自宅へ入れたくないと支援を拒む本人との信頼関係を構築し支援を行った事例 「バンザイ」の声を聴きたくて

居宅介護支援事業所かんべ村  佐藤 慎治

《総評》 認知症は多様性がある。認知症は記憶を保持する能力とエピソード記憶が大切。新たな記憶を残す為には、信頼関係の構築が重要。介護専門職が根気良く関わりながら、本人の生活意欲を取り戻した事例。
(安芸区) 頼りにしている家族は他県に在住しており、コロナ禍で帰省することができない中、多職種との連携により、何とか自宅での生活が継続できている事例

ニックス安芸居宅介護支援事業所  和田 美保子

《総評》 コロナ禍の中、家族の支援が難しくなり、多職種と連携し、生活が継続出来た事例。本人が服薬を拒否し飲めていない場合は、必ず主治医や薬剤師との連携が必要。認知症の方の支援では、公助を受ける前の段階の生活歴を知り、理解する事が重要。家族との連絡手段は電話であったが、今後はコロナ禍の中、家族ともICTの活用等で主治医や専門職との連携も必要になってくる。
(佐伯区) 認知症高齢者夫婦の在宅支援について

陽光の家 居宅介護支援事業所  徳毛 新太朗

《総評》 認知症と頑固な性格で、関りを拒む利用夫婦に対して、関係性の構築に向けて、介護支援専門員が、粘り強く訪問し、支援開始に向けて取り組んだ事例。複数の医者が関わっている場合は、主治医は誰なのか、主治医を選定する事で支援を進めていく事が重要。医療と連携する事で支援は進みやすくなる。
(中区) 一人暮らしのガン利用者への支援
〜「死ぬまで自分の家で過ごしたい」との思いに寄り添った取り組み〜

ケアプランサービス東千田  齋藤 圭美

《総評》 安心して自宅で過ごす為、多職種で連携し、ACPを実施した。「入院したくない」という本人の意思を確認し、主治医と看取りを行った事例。介護、看護職が帰宅した後で、急変し亡くなったとしても、これは専門職の責任ではなく、自分を責めない事。自然の流れで起こりうる事とし、状態を共有する必要がある。
(東区) 在宅復帰を目指す支援を通じて「住み慣れた地域」の概念を再考した事例

寿盛会居宅介護支援事業所青い鳥  穂井田 香緒利

《総評》 住み慣れた地域に戻る為に取り組む中で、地域の意味を考えさせられた事例。地域包括ケアシステムの「住まい」とは、本人の希望と経済力に叶ったその人の状況や状態にあった場所である。必ずしも自分が住んでいる所であるとは限らない。
(南区) ACPの導入をきっかけに利用者の“母親としての生き方”を感じとった事例

宇品・くにくさ居宅介護支援事業所  水口 美保

《総評》 「私のこころづもり」を活用し、本人の意向確認の為、ACPを試みた事例。ACPとは、自分の意思が表せなくなった時、今後の治療や介護をどうしたいのかを確認する作業である。@まずは始める事 A無理強いをしない B自らの言葉で語って貰う。本人の意思は、随時その時の体調や状況で変化する為、主治医の力を借り、タイミングを取りながら一緒に行う事が重要。
2025年度を見据え、地域包括ケアシステムの更なる充実を図り、全ての市民が住み慣れた地域で、安心して暮らして生き続ける事が出来るよう、質の高い医療・介護提供体制が不可欠となっている。今回の事例発表会は、20回目を迎えるが、介護支援専門員が、地域や専門職と協働し業務が行えていることが確認出来る大変良い事例ばかりであった。今後も、課題は何なのか、解決策のプロセスを重要とし、医療と介護の協働で重症化を予防し自立支援に繋げて欲しい。
  
アンケートまとめ
問1.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数198人)
とても参考になった 128人(64.6%) 参考になった 67人(33.8%)
ふつう 2人(1.0%) あまり参考にならなかった 1人(0.5%)
参考にならなかった 0人(0.0%)  
意見等(抜粋)
  • コロナ禍で同じように悩んでいる背景や環境の事例もあり、参考になりました。目指した方向性に行かなかった事例(地域・自宅での生活継続困難)などもあり、私たちが日々感じたり直面していることと同じことを皆さん感じるのだと共感しました。事例発表にあたり、たくさんの支援があり、最後の落久保会長の総評もとても分かりやすく、心に沁みました。
  • ICTの活用で勤務時間内に記録するすき間時間の有効活用が参考になった。具体的な事例で試行錯誤しながら前向きに良い方向へいく支援の過程がひとごとと思えず、共感しながら聞いた。
  • ICT、SNS、独居、ACPなど、今後の地域包括ケアシステムに向けて、事例内容が以前と変わってきていると感じました。
  • 何事にも信頼関係の構築が大事で、そのためにはまず話の傾聴を繰り返していくことが必要だと改めて感じた。ACPの導入の難しさを感じていたのだが、まずは初めてみること、無理強いをしない、自らの言葉で語ってもらうことが大事と教えていただきました。
  • 皆さん素晴らしい仕事をされておられ、同じ仕事をしているものとして誇らしい思いです。医療との連携なくしては在宅生活の継続は難しいことを改めて痛感しました。苦手意識が払拭できないのですが、勇気を振り絞り頑張ります。
  • 支援方法や考え方など新たな視点も多く、気付くことも多かった。“おわりに”に記載されている内容が、各自振り返りができており、終了ケースを振り返る必要があると感じた。亡くなった→終了ではなく、支援経過を振り返り、支援内容ではなく、その時にどう感じたのか、どのように思ったかなどの部分を再度思い返す必要があるように感じた。
  • 久しぶりに参加させていただきました。どの事例もケアマネの質の高さを感じるもので、自分自身のモチベーションアップになりました。ありがとうございました。
  • 事例発表の場をありがとうございました。落久保先生も話されておりましたが、事例発表を継続していくことは必要と思います。事例の共感や共有ができ、聞きながら自分の事例と照らし合わせたり、振り返ることができる貴重な時間でした。最後の総評のひとつひとつが、その事例の着眼点と支援のヒントや介護支援専門員としての心構えをお話しいただき、勉強になりました。
  • どの事例においても医療と介護の連携がとても大切であることが学べた。また、支援者として本人、家族の思いに傾聴し信頼関係を構築していくことがマネジメントを行う上で大事であり、今後、自分自身も利用者に対し、しっかり傾聴を行い本人が生きがいを持った生活が送れるよう支援していきたいと思う。
  • もう20回となるのは驚きです。日々の支援を振り返り、出来事を客観し言語化して発表することで、ケアマネにとって多くの学びとなっていると実感しています。また、他ケアマネの援助方法等、参考になることが多いです。
  • 介護支援専門員の事例を知ることで、自身のケアマネジメント業務に類似するケースに参考にしたい。送迎の認知症カフェの存在を知れたことが良かったです。ケアマネもコミュニティワーカーの役割が本当に必要と思います。包括とだけでなく、社協とも動けたらいいと感じます。
  • 内容だけでなく、スライドの作り方なども参考になりました。
  • 延期になっていたので、開催できて良かったです。発表者の方が取り組まれた成果が分かりやすく伝わり、私自身、今後のケアマネジメントにおいて参考になりました。
  • 皆さんの事例をお聞きしていると、同じような悩みを抱えているものにとっては、自分だけではない、頑張っていると元気がでます。これからの取り組みの参考にさせていただきます。
  • ICTの活用やACP等の私自身が経験したことのない事例があり、今後、そういう支援方法もあるのかと大変参考になった。同じ介護支援専門員として悩むポイントであったり、うれしさを感じる場面等を共有できた感じがしました。
問2.ハイブリット形式による事例発表会はいかがでしたか。(回答数194人)
とても良かった 101人(52.1%)  良かった 81人(41.8%)
ふつう 12人(6.2%) あまり良くなかった 0人(0.0%)
良くなかった 0人(0.0%)  
意見等(抜粋)
  • 音声が大変聞き取りやすかった。映像も会場全体を映していたので、私もそこにいるような一体感があって良かった。
  • 無観客とするとまた雰囲気が違っていたと思うので、ハイブリット形式が良いと思う。
  • 会場の人数が適度で良かった。
  • 会場に足を運ばず研修に参加できたため、感染リスクの軽減はもちろん、移動の手間もなく時間も有効に使えた。今後の研修はケアマネ研修を含め積極的にオンラインで対応できればと感じた。
  • 移動時間がなく、密にならず、自由に参加方法が選べる「ハイブリット方式」での研修は、コロナ禍において最適な研修方法と思います。どうもありがとうございました。
  • コロナ後も続けてもらいたいです。
  • コロナ禍であるし、研修会場への移動時間なども考えるとハイブリット形式の研修会は山間部の事業所にとってみればありがたいです。
  • 感染予防の面で、公共交通機関を利用して会場まで行かなくても受けられること、長い移動時間が必要ないことがとても良いです。ZOOMでの受講に慣れてきて、失敗したらどうしようという不安もなくなって受けられるようになってきました。
  • 参加者の就業する地域よりコロナの状況や交通の便など違いがあるため、ハイブリット形式で選べることは、とても良いことだと思います。
  • リモートで参加させていただきました。スピーカーからの声が時々早口やスローに聞こえることはありましたが、大きな支障はなく研修に参加できたことは新たな発見でした。設備の設定等皆様の努力があってのことと思います。感謝いたします。
  • コロナ対策にもなり、時間を有効活用でき、なおかつ、自分の勉強にもなるため、大変有意義な時間でした。
  • こういった社会状況のなか、安心して学べますし、時間を有効活用できると思います。
問3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
  • 権利擁護についての内容を勉強させていただきたいです。
  • ハラスメント対策の強化について。
  • ICTの上手な活用について。
  • 昨CMの医療知識が問題となっており、今後も必要性が高まってくると厚労省も考えておられるようです。テーマとして研修を行ってもらいたいです。
  • 団塊世代への対応(利用者の立場や家族の場合もあると思う)について。実際、家族対応で困っている事例が複数あります。
  • 介護支援専門員が知っておきたい医療知識、薬など。
  • 精神疾患について。
  • 同居家族(子ども)が疾患を抱えている支援について。
  • 法改正のポイントやケアマネジメント業務手法、事例発表会。
  • 困難事例や医療面など。
  • ACPにおける多職種連携について。
  • スーパービジョンの質問の仕方がわからないという介護支援専門員がとても多いので、事例検討会の方法や役割などを研修会で取り上げてほしいと思います。
  • 地域ケアマネジメント会議で検討されたケースの紹介(特に地域課題として認識され、地域で取り組み始めた事例などがあれば参考にしたいです)。
  • 各地域の資源について、いろいろと知りたいです。
  • 災害や感染症の対策についてなど。
  • 医療系との連携で上手くいくケース、いかなかったケースの事例を聞きたいです。
  • 担当者会議の内容も含んだ事例を知ることができると、より具体的な参考にさせていただけるのかなと思いました。
  • 若年性認知症の方の支援、ケース事例。
  • 介護保険と障害サービス併用しての支援、ケース事例。
  • 一人暮らしが増え、ケアマネのキーパーソン化が言われるようになってきているが、今後どう考えていくべきか。