(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第21回令和3年度事例発表会

日時 令和3年11月11日(木)10:00〜15:30
開催方法 ハイブリット開催
場所 広島県医師会館 ホール
参加者 176名(うち現地参加61名、ZOOM参加115名)
講演 実践の中から考える!!ケアマネの本質とは?!
講師 一般社団法人 宮崎県介護支援専門員協会
副会長 大峯 伸一 氏
【講演】
「実践の中から考える!!ケアマネの本質とは?!」
施設ケア実践からの学びとして、経管栄養で寝たきりの入居者の「食べたい」という思いを受け止め、経口摂取ができるようになり、字も書けるまで改善された事例をあげられた。その中で、本人の望む暮らしを実現するために専門職として目標を定め、ケアチームを機能させること、これはケアマネジャーがタクトを握る。入居者の水分や食事量、運動、排泄に注目し、@水分量1日2000ml摂取を目標に段階的に行い、A覚醒レベルをあげる(離床時間をのばす)ことは体力の向上につながる。基本となるものは、何を意図とし実践して結果をだすのか、それがぶれることなく努力しているか。パーソンセンタードケアやユマニチュードを実践に活かすこと。とにかく水分摂取が重要、量や好みなどを把握し、その人にあった方法を見つけること。人との関りで不活性化の改善を図る。ケアマネジメントの本質は@その人をみて、その課題をどう解決するのか。デイサービスやヘルパーなどの利用が解決ではない。本人に何ができるかセルフケアを見つける。A評価を丁寧に行う。決められたタイミングではなく必要時に行えるように意識すること。
「IOT機器を活用したデジタルケアマネジメント効果検証事業から見えてきたこと」
宮崎県都城市において、自治体、医師会、ケアマネ協会の協力を得て、パナソニック(株)がケアマネジメントの標準化を図るため実証に取り組んだ。本人や家族の発言だけでは見えない部分、玄関、トイレ、冷蔵庫などに見守りセンサーを設置し、その人の1日の排泄、水分摂取、生活動作の行動を把握し、そのデータを分析し、要介護者の生活を支えるケアマネジメントを行い、根拠のあるケアプランを立てる。それが要介護者の状態改善に寄与する。
<講演総評>ケアマネの本質は本人の思いを尊重し、情報を収集し根拠のあるケアプランを作る事。そのためには、その必要性や具体的内容を検討するため情報を分析し、本人のセルフケアにも着目した個別化したケアプランがたてられるよう、多職種との連携を密にしその要になれるように努力していきたい。
 
【事例発表】
<南区> 初めての看取り経験者への支援―グリーフケアへの取り組み―

あいわケアセンター M中 直子 氏

<西区> 本人と家族の意向の相違がありながらも、地域住民に支えられながら在宅看取りを行った事例

もみのき居宅介護支援事業所 薬師堂 奈美江 氏

<安佐南区> 〜本人のストレングスを活かした目標を共有する事で社会参加に繋げた支援〜

 IGL居宅介護支援事業所シャレー 原 大輔 氏

<安佐北区> エビデンスに基づく目標設定で意欲を取り戻したA氏への支援事例

居宅介護支援事業所 緑ヶ丘静養園 松本 桂 氏

<安芸区> 社会に出て働きたいという目標に向かって多職種連携し社会復帰ができた事例

はたのリハビリ居宅介護支援事業所 久保 伸恵 氏

<佐伯区> ご家族の支えとチームの支援により生活動作が安定してきた事例

居宅介護センターとも 水原 久木 氏

<中区> 地域の祭りを通じて社会との繋がりを作った事例

ケアプランセンター柚李(ゆずき) 児玉 洋明 氏

<東区> 止まないセクハラ行為に不安を抱える妻への支援について

土谷居宅介護支援事業所戸坂 倉田 剛 氏

 
【事例発表会総評】
家族だけでなく、ケアをした介護職員へのグリーフケアを行うことで職員の個々の不安や感情を整理し振り返りができ、今後の支援に活かせることにつながった事例。また、ACPを用いて本人の意思を確認し、揺れ動く家族の思いをうけとめながら方向性を確認し在宅看取りに向けてケアチームをまとめていく事例から介護支援専門員として重要な役割を果たしていることを感じた。
利用者は若年化しており、障害福祉から介護保険への移行で生じるケア内容のズレから何度も話し合いを行い、本人のストレングスを見いだし社会参加へとつなげた事例やエビデンスに基づいた具体的な目標設定で本人の意欲が出た事例、50歳代で発病し多職種連携で社会復帰できた事例、家族の支えと支援チームにより在宅生活が継続できている事例、セクハラ行為に不安を抱える家族支援、男性高齢者の活躍の場をつくる支援など、いろいろな制度の理解から、本人や家族支援、地域つくりなど多岐多様にわたっている。利用者、家族のそれぞれの思いに寄り添い、共感し、急かさず一緒に考え、サービス提供チームと情報共有しながら何度も話し合いを行い、問題解決に向けて成果をなした事例発表であった。
今回の事例発表を通して、利用者が住み慣れた地域のなかで自分の居場所で最期まで過ごせるように積極的に地域の中に入り、自助、互助の仕組みの開発など、地域包括ケアシステムの構築にむけて、介護支援専門員は利用者・家族をはじめ専門職や民生委員、地域団体、住居周辺との関わりに意識をもって取り組んでいく必要性を感じた。
  
アンケートまとめ
1.本日の研修会の内容はいかがでしたか。(回答数175人)
とても参考になった 131人(74.9%) 参考になった 42人(24.0%)
ふつう 2人(1.1%) あまり参考にならなかった 0人(0.0%)
参考にならなかった 0人(0.0%)  
意見等(抜粋)
  • 事例が分かりやすかった。今後の支援に活かせるようにしていきたい。家族への働きかけをあきらめずにチームで考えていくことが支援につながると思った。
  • 日頃のアセスメント・モニタリングで、水分量、食事量、運動量、排泄について細かく聞いていないと、何が問題なのか課題が明らかにならないと感じ、改めていこうと思った。
  • 大峯さんの講演は非常に分かりやすく、改めて利用者様を中心においた支援、利用者様をしっかりと見ながらマネジメントをすることの重要性を確認できました。ありがとうございました。
  • 私たちの仕事の本幹は、本人の望む暮らしの実現であることを、改めて胸に刻みました。
  • 施設も在宅も関係なく水分補給がとても大切で、基本的な事をしっかりと理解し、関わることが大切だと改めて思った。「朝の関わりを変えること」、人手不足もあり、なかなか難しいことだと思うが、とても良い取り組みだと思った。
  • 話し方がとても上手で聞きやすかったです。内容もとてもすばらしく、本人の望む生活が送れるよう、取り組んでいきたいと思います。
  • 私自身、ご利用者の課題をすぐに解決に結びつくサービスを考えていると反省しました。気付きを与えていただき、良かったです。
  • ICT化への対応、データ化したアセスメントと根拠の収集に、ケアマネとして波に乗れるよう、スイッチの切り替えをしなければいけないと感じました。施設だろうが在宅だろうが、その方の生活様式、支援方法はデジタルとアナログの連携だと感じました。
  • 大峯先生の講演で、家族との信頼関係の築き方、目標をしっかりと定める、チームをしっかり機能させる、水分摂取がとても大切なこと、利用者の意欲の引き出し方など、とても参考になりました。
  • 3年ぶりの経口摂取への支援にとても感銘を受けました。このような事例を見れたことで、可能性があると分かることで提案・支援が大きく変わります。
  • 忙しいや人手が足りないで済まさず、個人に寄り添って対応されている事例を伺うことができた。各利用者、家族が必要としているときにすぐ対応できるようにしていきたいと感じた。
  • 大峯様の講演の中で、水分補給についてただの脱水予防というだけでなく、覚醒レベルを上げるための水分補給というのを聞き、目から鱗でした。本人の望む暮らしをどう実現するか、利用者様が自信にあふれ笑顔があふれるよう支援していきたいと思いました。
2.本日の事例発表はいかがでしたか。(回答数174人)
とても参考になった 102人(58.6%) 参考になった 68人(39.1%)
ふつう 4人(2.3%) あまり参考にならなかった  0人(0.0%)
参考にならなかった 0人(0.0%)  
意見等(抜粋)
  • 様々な視点の事例で、参考にする点が多くあった。
  • 多職種で情報共有されている事例が多く、このことの大切さを確認できた。目標設定を具体的にすることで、本人の意欲が向上する事例を通して、参考にしたい。
  • 一人一人の強みを活かした支援方法がまとめてあり、その結果こうなったということも短時間の中に分かりやすく発表してあると思いました。
  • 各区の発表者の視点が、それぞれ自分にはないものだったので、とても新鮮でした。
  • 毎年事例発表会に参加しています。発表者の取り組みは今後の支援の参考になります。
  • 現在、私が担当しているケースの類似点や、ケアマネとしての資質向上に活かします。
  • 各事例とも利用者の思いにしっかり寄り添って支援している内容だと思いました。
  • ケアマネとしての葛藤や決断など、同じようなケースを担当しても様々な方向性があり、今後の支援に向けてとても参考になりました。
  • 若い方の事例や社会に復帰できた事例など、とても参考になりました。今は若い方も増えてきているなか、制度の勉強はもちろんのこと、介護保険外での地域の社会資源の大切さや開拓が必要。今後の支援活動に役立てたいと思いました。まだまだ勉強していきたいです。
  • どの事例も分かりやすくパワーポイントでまとめておられ、感心しました。ZOOMでも、音声や画像よく受講しやすかったです。
  • どの事例も利用者本位で取り組まれていたので、今後の利用者との関わり方を考えさせられた。
  • 毎年皆さんが苦慮しながらも支援されているのを聞き、元気をもらっています。
  • 地域行事への取り組み、セクハラへの対応など、難しく興味深い事例が多かった。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
  • ACPについて
  • 接遇
  • 介護保険制度の持続可能性について
  • BCPの具体的な作成例などの研修
  • 若い人の支援について
  • 共生型サービスや若年の方に対する支援が今後増えていくと言われたことや、ACPに対する取り組みなど、まだまだ勉強していくことが多いので参加したいです。
  • 地域課題について、介護支援専門員の関わりについて
  • CHASE VISITの情報収集と活用方法
  • 難病のある人の支援についての研修
  • 地域活動(インフォーマル探し)
  • 若年性認知症や認知症支援チームの事例等を聞いてみたいです。
  • コロナ云々に関わらず、オンラインの形態で受講できる環境は続けてほしい。
  • ICT機器を活用したケアマネジメント関連について
  • 成年後見や虐待などの事例を通した権利擁護の研修会
  • キーパーソンに援助が必要な場合の対応策などが知りたい。
  • 自立・自律支援のための取り組み
  • 支援者のメンタルヘルスについて
  • 特定事業所算定の居宅介護支援事業所へ求められる課題など