2.自主研修会
講演 |
「仕組みが分かる!成年後見」 |
講師 |
筑波大学 人間系 生涯発達専攻 特別研究員 永野叙子先生 |
お金が無い方の支援も悩みますが、お金があり認知面の低下のある方の支援は、ケアマネジャーにとって悩ましい問題。特殊詐欺や家族からの経済的虐待。そこで助けとなるのが後見人である。
「判断能力が十分でない人」の暮らしを支えるツール。福祉や医療の支援者は「代理権」など法律上の権限を持たないことから本人に代わって財産を触ったり契約を結ぶことが出来ない。後見人制度を利用する事で支援チームに法律上の権限を持つ支援者が参加する。
成年後見制度の概要、権限などを知り業務を分担する事で介護支援専門員としての役割と関わり方を考える。
成年後見制度の概要
法定後見制度と任意後見制度がある。成年後見制度は法定後見制度の事になる。
法定後見制度には「後見」「保佐」「補助」があり重度〜軽度の方の支援になる。
認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方(本人)について、本人の権利を守る援助者を選ぶ事で、本人を法律的に支援する制度となる。
成年後見制度の対象者
身体上の障害を除く全ての精神的障害(認知症・精神障害・自閉症など)により判断能力が不十分な人が対象となる。判断能力とは法律行為の意味や効果を理解し、利害得失の判断が適切にできることである。
制度利用者の実際
認知症の方が6割強となっている。「後見」「保佐」「補助」と分類されるが「後見」が7割強を占める。後見制度によって後見人が全てを決めるのではなく、本人の持つ能力、ストレングスを引き出し最大限に活かす。ノーマライゼーション(自己決定)の精神が大事となる。
「後見」はオールマイティだが、「保佐」は代理権をつける事に本人の同意が必要など違いがあり、本人の状態に合わせた支援となる。
申立て手続きについて
法定成年後見制度の手続きは
@親族(4親等内)などが本人のために申立て
A家庭裁判所にて調査、鑑定、審問
B成年後見人を選任・登記(法務局)
C登記事項証明書をもって本人の代理など後見活動をする
申立ては本人、配偶者、4親等内の親族だが親族がいないとき市町村長申立てがある。
令和4年度の統計では市町村長申立てが最も多く、次いで本人、子などとなっている。
行政が制度を必要とする方に対し積極的に関われている傾向にある。
成年後見人等 だれがなっているか
親族後見から第三者後見(司法書士、弁護士、社会福祉士、法人、市民後見人)にシフト
誰を成年後見人にするかは家庭裁判所の職権のため「誰が成年後見人になるか分からない」というのが、大きな課題。
ただし、申し立ての際に候補者を記載する事ができる。記載が無い場合は、専門職団体の推薦となる。複数後見も可能(財産管理=法律家・身上監護=社会福祉士など)後から追加で選任する事もできる。権利擁護センター(社協)など法人後見もある。一度就任すると正当な理由がないと辞任や解任ができない。
成年後見人等の報酬額の目安
月額2万円、ただし管理する財産によって変わっており、家庭裁判所が決定している。
成年後見制度 利用支援事業
成年後見制度は権利擁護のしくみ。お金のある人しか利用できないということはあってはならないので、市町村による助成事業がある。報酬助成制度がないと、報酬がなく、専門職のなり手はいない。誰もが権利擁護のしくみを利用できるようにするために必要な制度。
後見人の役割を知って、業務を分担
職務と権限、義務について
後見人の職務範囲は
1 財産管理に関する事務
2 生活、療養看護に関わる身上保護に関する事務
3 家庭裁判所への報告
権限として
・代理権(本人に代わり法律行為をする権限)
銀行口座の照会、開設、解約、年金の各種手続きなど。
・同意権・取消権(本人の行った法律行為を取り消す権限)
悪質商法による詐欺被害の救済、契約の取り消しなど。
成年後見人等ができない行為
1 事実行為(職務でない行為)食事や排せつの介助、清掃や送迎など
2 身元保証人、入院保証人になること
3 医療行為への同意 現行法では本人以外は誰も出来ない
4 一身専属的な権利の代理行為 結婚、離婚、養子縁組など
本人の財産を適切に管理し、安心で快適な生活を送れるように援助。本人の望む暮らし、本人らしい暮らしが何であるかを知り、その実現を支援する「意思決定支援」が大切。
本人情報シートを作成する意味と活用
医師が診断書等を作成する際に、本人の置かれた家庭や、社会的状況に関する情報を的確に伝えるために必要。ソーシャルワーカーとして本人の福祉を担当している方が作成。介護支援専門員、施設相談員など客観的な事実が必要なため、親族、本人が書くことは想定していない。
介護支援専門員は本人情報シート記載にあたり、本人の判断能力の程度等に関する判断を的確に行うための、本人の生活状況等に関する情報を提供できる立場にある。
研修まとめ
介護支援専門員の役割
*利用の流れを知り、「この人に成年後見が必要なのでは」と気付く。
*深刻な状況になる前に、早めに本人に声をかける。
*まずは地元の地域包括支援センター、障害は市町村の相談窓口へ問い合わせる。
*後見制度につなぐための機関に対して、適切な情報提供をおこなう。
メリット、デメリットを理解した上で「判断能力が十分でない人」の暮らしを支えるツールとして成年後見制度を活用する。 |