(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第24回令和6年度事例発表会
日時 令和6年12月19日(木)10:00〜15:30
場所 広島医師会館 大講堂
参加者 150名
講演 「ケアマネジャーの課題と未来へのメッセージ」
講師 一般社団法人 日本ケアマネジメント学会
副理事長 白木 裕子 氏
【講演】
 講演では、白木先生から居宅介護支援事業を取り巻く状況の変化として、団塊の世代800万人が75歳以上となり今後拡大する介護ニーズに対し一方でケアマネジャーの状況は定年や過重労働、ストレス等による離職による慢性的な人員不足や募集しても雇用できない現状があり今の人員以下の体制で対応せざるを得ない状況が見込まれ、今後10年余りの介護ニーズに対していかに対応していくかが課題であると問題提起があった。
 また、ケアマネジャーに行ったアンケート調査結果を踏まえ、ケアマネジャーの離職を防止するためにも主任介護支援専門員研修では学ぶことができない管理者への研修の必要性や現在実施されているケアプラン点検においても、提出する前には事業所の管理者のチェックが必要であるがチェックがないまま提出されることが多いこと等、質の向上だけではなく、事業を運営する管理者への課題についても提示があった。
 そのような課題への対応について、管理者である主任ケアマネジャーが事業所や地域でのロールモデルとなり、ケアマネジャーを育てていくこと、安心して働ける職場環境の確立や実践的なスキルの習得をすることなど土台作りに尽力すること等、管理者の役割について経験を踏まえ話された。
 最後に「在宅介護の要」としての自負をもつこと、専門職であるならば自己研鑽は不可欠であること、事例を発表して後世に残すことが未来のケアマネジャーにつながっていくことを私たちへのメッセージとして伝えられた。先生の講演をお聴きし今のケアマネジャーを取り巻く環境を他責にせず、自ら課題解決に動くことを改めて決意でき、今後のケアマネジメントに生かしていきたい。
 
【事例発表会】
<佐伯区> アルコール依存症により崩壊した家族関係から、病気やお酒とも上手く付き合いそれぞれが穏やかに過ごせるようになるまで

ケアプランセンターi・ケアゆき 埴生 智美 氏

<中区> 若年性認知症の進行があっても、家族の支援や地域との繋がりで住み慣れた自宅での生活を継続している事例

オフィスたいよう広島中央 鈴江 恵美子 氏

<東区> 「事例検討会」を通じて自分の事例に改めて向き合い気付きを得られた事例

広島県看護協会居宅介護支援事業所「ひろしま」 保永 康枝 氏

<南区> 利用者を支えるチームから学んだ介護支援専門員としてのやりがい

いでしたケアプランセンター広島南 久保 恵 氏

<西区> 成年後見制度を活用して本人の選択の尊重を行った事例

広島中央保健生活協同組合 広島中央保健生協居宅介護支援事業所
岡田 裕介 氏

<安佐南区> 医療と介護の連携で、夫婦二人の生活が続けられた事例 〜2040年に向けて〜

生協ひろしま居宅介護支援事業所・安佐南 加美 友里 氏

<安佐北区> 「重症心疾患患者に対する在宅ケアの課題と可能性」

ふかわ・くにくさ居宅介護支援事業所 西田 襟佳 氏

<安芸区> 40代末期癌、余命2ヵ月間の看取り支援 20年間の疎遠状態から家族愛にあふれた実家での看取りができた事例

土谷居宅介護支援事業所矢野 高山 千晶 氏

 
【事例発表会総評】
 @アルコール依存症により崩壊した家族関係からそれぞれが穏やかに過ごせるようになった事例、A若年性認知症者の進行があっても自宅での生活が継続できている事例、B事例検討会を通じて自らの事例に向き合い気づきを得た事例、C利用者を支えるチームから学んだことがやりがいにつながった事例、D成年後見制度を活用したことで意思の代弁につながった事例、E医療と介護の連携により夫婦の生活が続けられた事例、F重症心疾患患者に対する在宅ケアの課題と可能性についての事例、G40代の末期がんの看取り支援ができた事例の8事例の発表があった。
 それぞれの発表者が事例と真剣に向き合い、苦悩したり喜びを感じたり新たな学びを得たりした様子が手に取るように感じられた発表であった。白木先生の総評では、それぞれの事例に対して先生の考えられたキーワードを交えたコメントをいただき、今後は事例発表ではなく、事例研究につなげて欲しいと提案があった。また、一つひとつの事例が終わったのではなく、何ができたか振り返ることが大切であり、その経験を事例発表会で共有することがさらなる協会の発展につながると心強いメッセージもいただいた。
 介護保険創設から続いているこの発表会が今後も続けられるよう、研鑽を重ねていきたい。

 
(アンケートまとめ)
1.研修会に参加していかがでしたか。(回答数 139人)
非常に有意義だった   83人(59.7%)
有意義だった   51人(36.7%)
普通   5人( 3.6%)
あまり良くなかった   0人( 0%)
 
2.研修内容は、今後の実務に役立つ内容でしたか。(回答数 136人)
非常にそう思う   97人(71.3%)
ややそう思う   37人(27.2%)
あまりそう思わない   2人( 1.5%)
そう思わない   0人( 0%)
意見等(抜粋)
○研修会の感想
  • ケアマネの未来は明るいとは言えないものの、皆さんの事例に触れることで、ケアマネを必要不可欠な専門職と自覚してプライドを持ち、苦労しながらも利用者に向き合う仲間がたくさんいることを感じた。自分もがんばろうと明日から改めてがんばれそうです。
  • ケアマネジャーの課題について、実際のアンケート結果に基づき説明され、私が日頃から感じていることと同じ傾向であったことに少し安心した。やりがいを感じている人が7割弱だったことを白木氏は嬉しいと話されたが、私としてもそのような仕事に関われたことを誇りに感じる。
  • 白木先生のケアマネジャーの在り方や行政への働きかけについて、以前から言われる課題に対して、先生のお膝元での実績等聞き、目が覚める思いでした。私自身、経験や勉強も足りませんでしたが、ケアマネジメントへの取り組みや行政への働きかけは地域での格差は大きいと感じ、今後もっと地域福祉の在り方や他地域の施策などを学ぶ必要性も感じた次第です。
  • ケアマネの減少、待遇改善のことなど、直接的干渉まではできないにしろ、働きかけなどして下さっている事に大変感謝致します。ケアマネ業務の複雑化、更新制度の負担など、代弁して頂けている事にとても救われます。
  • 特にケアマネが在宅介護の要であり、行政の高齢者政策に必要な情報や課題を抱えているということ、それをしっかりと行政に政策提言する役割がある方がよく理解できました。しかし、そんなケアマネがここ広島市では、行政とケアマネとの接点が全くないこと、個別課題は持ってはいるが、それが地域の課題として抽出もされない実態と、地域の差が浮き彫りになったと実感しました。職能団体として今後行政に対して提言できることを期待します。
  • ケアプラン点検が仕事に対するやりがいや誇りをなくすものにならないことを希望しています。
  • ケアマネジャーの業務や取り巻く環境については、ターニングポイントに差し掛かっているところだと感じている。法定外業務とシャドーワークの仕分けや処遇の改善要求、研修制度の今後の在り方の検討など、今まで燻っていたケアマネ当事者の意見が反映されている機運はとても良い状況と思う。介護報酬改定のたびに肩透かしを食らうケアマネへの処遇を次回改定では、改善の方向へ向かえばと期待している。声をあげるという大切さも知った。
  • 複雑なケースが増える中、シャドーワークをどこまで受けるべきなのか常に考えながら業務をしているが、役割分担ができないか、行政にも働きかけていくことが必要と感じた。当たり前にならないように事業所間でも検討したい。
  • 重要事項説明書に業務内容でできることできないことを作成したいと思います。
  • 多職種のチームで介護支援をしていく時、役割を持ち、本来業務をしていけたら良いと思いました。困った時の相談先、つなぎ先がすっきりわかりやすくなれば、支援もしやすくなる。
  • ケアマネの業務改善と処遇改善を両論で進めること、適切なケアマネ手法や疾患別ケアマネジメントについての白木先生の意見がとても参考になりました。
  • ケアマネジャーとして自己研鑽が必要なことは理解しているつもりだったが、指導を受ける機会が日常業務の中ではどうしても少なくなり、もっと自分からも相談、受言を受けることが必要だと感じた。
  • 管理者の役割や研修や育成、教育を事業所や管理者が意識できるようなしくみが欲しい。
  • 主任CM更新研修を終わったばかりで適ケアのことを言われ、心が揺らぎました。
  • 「主任が管理者である必要はない」の言葉に同感です。
  • 尊厳と自己決定の支援を医療職ではない視点でケアマネジメントできる様に頑張ろうと思いました。
○事例発表について
  • 発表にあたり、自分の事例を何度も振り返り自己分析されているのがよく分かり、とても参考になった。
  • みなさん忙しい中、ドクターや多種職連携もできており、素晴らしいと思った。
  • 担当利用者の対応の参考になったことと、自分の対応を改めて振り返りたい(言語化)
  • ケアマネ一人で抱え込まず、多職種で連携し支えていくことが大切だと改めて思いました。
  • 事例の中で、意思決定支援が丁寧にされていること、今までの自分の関わりのヒントがあり、これからの支援の学びになりました。
  • 事例発表から、日頃のマネジメントへの参考になりました。特に4、5事例は、現在の自分のケースにも当てはまり、動き方に悩んでいたので参考にさせてもらいます。
  • 困難事例にどのように対応し、解決に導くことができたかを聞くことで、今後、同様の事例に遭遇した際の対応の参考になった。
  • 成年後見等、保佐人との関わりが未経験の為、今後、機会があれば関わっていきたいと思いました。
  • 事例発表された方ご本人の意思を尊重した支援、とても素晴らしいと感じました。
  • 現在、独居の方も受け持ちにおられ、南区と西区の発表にも興味を持ち、自身の受け持ちの方に取り入れたいと考えた。
  • 家族(パーキンソン、施設に入れたい)の思いを、本人(入院中→家に帰りたい)の意思決定が違う事で悩む事があり、そのようなケースの対応も知りたいと思った。
  • アルコールによる酒害がありながら、医療と確認し、サービス付高齢者住宅の24hケアあっての適量飲酒という本人希望実現に驚かされました。
  • まだまだ歴史が浅く、発展途上のケアマネジメントが研究を通して糧となり、それが裏方の皆さんの頑張りで支えられていることに感銘しました。
  • 非常に分かりやすく良かったが、投票等して順位を出した方がモチベーションが上がるのではないか。
  • 質のバラつきが気になりました。事例選定を熟練したケアマネがサポートすべきと思いました。
  • 事例発表後に周りの席の方と少しで良いので意見交換のような時間があっても良いと思います。
 
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
  • 適切なケアマネジメントの実践研修
  • 障害福祉や、その他機関が関わる複合的な事例等があれば参考にしたいです。
  • 白木先生のお話されていました障害者の方が勤務されていることについて、それまでの取り組みや制度や助成などがあれば知りたいと思いました。
  • 障害、ヤングケアラーなど多岐にわたるもの
  • 生活困窮や身寄りのない方の支援、金銭管理など
  • 生活苦や障害(精神含む)を持つ家庭を持ちながら、今ある支援の狭間でケアマネに何が出来るのか、さまざまな制度を学びたい。生活保護や支援を受けることのできない低所得より上の中間クラスの世帯や、一人で要支援者を支えているケースを学びたい。
  • 精神疾患の方への対応
  • 新人ケアマネに向けての研修
  • 現任、管理者を対象にした研修会
  • 多職種連携について(ケアマネはよく勉強しているが、他サービスはどのようにされているのでしょうか。一緒に研修を受けることで、良い連携ができるのではないでしょうか。)
  • 社会資源の活用、医療連携の事例、虐待の事例
  • 介護保険改正、広島県で行われている高齢者への助成について
  • 成年後見制度など介護保険外の制度についての活用について
  • 介護予防サービス・支援計画書の考え方、書き方
  • 介護サービスと障害サービスの併用について
  • 事例検討の進め方
  • 困難事例(他制度の活用、家族など)
  • F-SOAIP(生活支援記録法)について
  • サ高住は地域資源だと思いますが、問題点やサービス内容が様々です。サ高住について学びたい。
  • CMとAIについて、今後について
  • ICT活用や業務の使用ツール(アセス様式やモニタリング記録など)、業務の生産性向上のコツなどの様々な例を知ることで、ケアマネジメントの効率化に繋げられる研修があるといいです。
  • データベースの検証
  • 介護支援専門員のシャドーワークを減らすための社会資源の創出や活用例、連携方法、地域や行政や各機関への発信等
  • 家族支援におけるケアマネの役割について
  • 北海道あかい花代表、菊池雅洋氏の講演を聞いてみたいです。
  • BCP訓練、ハラスメント対策
  • 地域課題について検討したいと思いました。