(研修会報告)

日時 令和7年3月13日(木)14:30〜16:10
開催方法 オンライン開催
参加者 171人
講演 「介護保険制度、介護支援専門員をめぐる状況〜ケアマネジメントに係る諸課題の検討会、その後〜」
講師 厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課 人材研修係長 上柳田 雪花 氏
 
○介護保険を取り巻く状況
   
(1)

65歳以上の高齢者は2025年には3,653万人となり、2043年にはピークを迎える予測(3,953万人)。また、75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2060年には25%を超える見込み。65歳以上の高齢者のうち、認知症高齢者が増加していくこと、世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していくこと、また地域の高齢化の状況は異なるため、各地域の特性に応じた対応が必要となる。

   
(2) 85歳以上の人口は、2015年から2025年までの10年間で、75歳以上人口を上回る勢いで増加し、2035年頃まで一貫して増加していく見込。そのため要介護認定率も85歳以上で上昇、一人当たりの介護給付費も急増している。
   
(3)

2025年以降、「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化。

○介護保険制度の見直し・報酬改定等

 第9期(令和6年度〜)の主な改正事項について要点の確認と居宅介護支援における今後の課題について触れられた。一人あたりの取扱件数の引き上げ、指定介護予防支援の対応に伴い、ケアマネジメントへの影響や業務の実態把握をし、人材確保の視点も踏まえ、必要な対応について検討していくべきとのお話しがあった。

○ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会、その後

 第6回までの検討会における中間整理の公表。介護支援専門員の従事者数の減少、事業所数の減少、苦戦している採用状況等の報告がある。

  • ケアマネジャーが専門性を活かし、個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力するための負担軽減等の環境整備が必要。
  • 主任ケアマネジャーの役割の明確化や位置付けの検討
  • ケアマネジメントの質の確保を前提とし、幅広い世代に対する人材確保・定着支援
     現在働いてる方々の就労継続支援,新規入職の促進,潜在ケアマネジャーの復職支援
  • 法定研修の在り方
  • ケアマネジメントの質の向上に向けた取組みの促進
また、2040年に向けて地域で求められることが想定される相談支援の在り方、複合的な課題を抱える高齢者の増加に対応するための相談体制の整備が必要であり、今後もヒアリングと検討会での議論が実施される方向性についてお話があった。
○最後に

 今回の研修内容は業務に直結する関心の高いテーマであった。昨今の居宅介護支援を取り巻く環境の変化、人材不足は全ての職種について言えるが、ケアマネジャーにおいても大きな課題となっている。ケアマネジャーの資質の確保・向上を図りつつ、どう業務負担を軽減していくか。80歳以上の単独世帯・高齢夫婦世帯が加速し、人口減少となる日本において、介護サービス提供の最適化が重要。我々一人一人がマネジメントの要となることを自覚し、意見を出し合い検討していかなくてはならないと改めて考える機会となった。

(アンケートまとめ)
1.研修会に参加していかがでしたか。(回答数 123人)
非常に有意義だった   35人(28.5%)
有意義だった   65人(52.8%)
普通   22人(17.9%)
あまり良くなかった   1人( 0.8%)
2.研修内容は、今後の実務に役立つ内容でしたか。(回答数 123人)
非常にそう思う   45人(36.6%)
ややそう思う   72人(58.5%)
あまりそう思わない   6人(4.9%)
そう思わない   0人( 0%)
【意見等(抜粋)】
○研修会の感想
  • まだまだ介護支援専門員を取り巻く環境はシビアではあるなと感じましたが、日々の自己研鑽に励みたいと思います。資料やグラフの種類が多く説明も滑らかで、介護支援専門員をめぐる状況がわかりやすかったです。
  • ケアマネの労働投入時間についての資料が、数値で見る事が出来、興味深かったです。
  • 適切なケアマネジメント手法のモニタリング結果は興味深かった。
  • ケアマネジメントに係る諸課題に対して国が検討している内容が良く分かった。
  • 介護保険制度、介護支援専門員の現況を知ることができ勉強になった。
  • 制度改正内容が自分の認識が正しかったのか確認できた。
  • 今後の明るい展望の話はなく、暗い情報ばかりだった。もっと現在のケアマネが頑張れるような内容の研修だとうれしかった。
  • たくさんの情報を教えていただいたので自分で復習しようと思います。
○業務負担について
  • ケアプラン点検がかなり負担、精神的にやられ、ケアマネをやめたくなる人が多いと思う。加算などが複雑化しすぎ、変更事項が多すぎることも業務負担を増やす原因です。ICTについてもバラバラの物をケアプラン連携システムで統一出来ていないので作業だけが増えて難しいです。単純化しないと後継は育たないと思います。
  • ケアプランデータ連携の導入が進んでいないので、次回改定の際には特定事業所加算の算定の要件にケアプランデータ連携必須にした方がいいと思う。
  • 一人ケアマネには事務作業が多すぎで負担です。
  • ケアマネにしかできないことがあると思います。利用者や家族の生活の困りごと、悩みを聴くこと、寄り添うこと、望む暮らしの実現のためにアセスメントしサービス調整を行っていくこと。仕事としてはやりがいがあると思います。それをもっとしたくても、書類の多さなど業務負担で思うようにいかない状況をどうしたら良いか、どう改善できるか、ケアマネ同士や職場内でのサポートも必要だと日々感じています。
○範囲外の業務について
  • 利用者家族の高齢化や独居世帯が増えている為、介護する環境が整わず、ケアマネの業務外の仕事も増えてきているので、独居高齢者の金銭面の整備、保証人などについて早急に相談できる制度やインフォーマルサービスを増やしてもらいたい。
  • ケアマネの業務範囲外や更新研修の負担について、もっとケアマネの声を聞いて本質的な課題について解決しなければ何も変わらないと感じた。
  • やむを得ず法廷業務以外に関する利用者対応が多いことに対して報酬が無く、同業者以外の人から報酬が無い事を理解してもらえておらず残念に思う場面も多いです。
○人材不足について
  • 若い世代のケアマネがいないのは家庭との両立が難しい事や仕事量の多さ、幅広さ、また困難ケースが多い(ケアマネは守られていない)などの理由ではないかと思う。
  • 給与面、研修時間や更新制度の必要性等ある程度問題点は明確になっている状況ならばそれに向けた具体的な方針・対策を示して欲しい。財源の問題などが背景にあるとは思うが、省庁として政府に対し、さらなる働きかけや提案の余地があるのではないか。
  • 高齢化により事務的負担がかなり高くなるようで、その事でケアマネから離職される人もいます。
  • 人材不足を補うために、看護師や医師や年をとり、しんどくなったらケアマネの資格と取ってケアマネを増やすとの説明があったが、ケアマネの方が楽をしていると思われているのではないかと思い、私たちの大変さを理解してもらえていないのが残念だった。ケアマネは24時間365日利用者からの連絡に対応し精神的な負担はかなりのものだと思う。
  • ケアマネ不足や高齢化について、事業所としても直面している状況です。また、賃金の低さは他の介護の仕事と比べ負担が大きい(ケアマネ個人にかかる負担)こととあっていないため、法人内で若い方がケアマネを目指されない理由だと聞いています。また、管理者と介護支援専門員の業務を兼務することでの負担も大きいところもあり、そういった実情を踏まえた検討をしていただけるとケアマネのなり手も増えるのではないかと思います。以前より、そういったことが少しずつ理解してもらえて来ていることにうれしく思い期待を持ちながら今後もケアマネを続けてみようと思います。
  • 高齢化率の上昇が当面続く中、若い方の希望の持てる仕事として提供できるよう努めたい。
○更新研修について
  • 更新研修等の負担軽減について検討されていると聞きとても期待しています。近い将来、業務と併用しながらも受講しやすい環境が整うことを希望します。
  • 更新研修については本当に大変です。仕事だけでも時間が足りない中、課題の準備に長時間の講義で休む時間がない。
    講義が出来る人材が必要なのではなく、指導出来る人材が必要なのでは?
  • 負担は多くありますが、先生がおっしゃるようにアップデートやスキルアップのための研修は必要だと共感しました。
 
3.今後、参加してみたいと思われる研修のテーマやその他ご意見等
  • ケアマネの業務外の対応について
  • 業務の効率化について
  • 運営指導のあり方
  • 他のケアマネジャーの実情やあり方について
  • ダブルケアについて、ワークサポートケアマネについて
  • シニアケアマネの働きやすい仕組みについて
  • 適切なケアマネジメント手法による情報収集
  • 疾患に対する適切なケアマネジメント(チームケア・他職種連携)
  • インフォーマルサービスや他制度を取り入れたケアマネジメント
  • ICTの活用について(ICT化のモデル事業の実施状況など)
  • 民間サポート事業ガイドラインについて。民間事業と行政がより協力できたら良いのでは。
  • 要介護認定の調査内容の全国的な傾向や地域性など厚生労働省からの情報
  • 定期的に、厚労省でどのような議論がされているのか聞きたい。
  • 介護保険の報酬改定・社会保障制度について
  • BCP
  • 在宅での医療連携
  • 虐待対応(行政や包括が実際どのように動いてくださっているか)
  • 身寄りのない方や、徘徊がある認知症の方、精神疾患患者などにおける対応方法
  • 利用者本人ではなく家族に問題があるケースなど困難事例の対応について
  • ヤングケアラー
  • ハラスメントについて