(研修会報告)
居宅介護支援事業者研修会 第25回令和7年度事例発表会
日時 令和7年12月4日(木)10:00〜15:30
場所 広島医師会館 大講堂
参加者 150名
講演 介護支援専門員の“専門職”としての発展に向けて
〜ワーク・エンゲイジメントの視点から〜」
講師

北星学園大学 社会福祉学部 社会福祉学科
教授 畑 亮輔 先生

【講演】

 北星学園大学の畑亮輔先生を講師に迎え、ケアマネジャーの現状と、持続可能な働き方を実現する鍵となる「ワーク・エンゲイジメント」をテーマに、専門職としての活力や熱意を維持する秘訣について講演が行われた。
 現在、ケアマネジャーの人材不足は極めて深刻である。全国の試験合格者数は2018年度の要件変更を境に激減し、以前の年間約2.7万人から現在は約1万人と3分の1に減少した。広島県も同様の傾向で、合格者は約250人にまで落ち込んでいる。居宅介護支援事業所数も、直近5年間で県・市ともに約15%減少した。要介護認定者が増え続ける中、ケアマネジャーの量的確保と質の担保の両立は喫緊の課題である。
 こうした困難な状況下で注目すべき概念が、仕事に対して「熱意」「没頭」「活力」の3要素が揃い、生き生きと働けている心理状態を指す「ワーク・エンゲイジメント」である。
 講師より、バーンアウトを防ぎ専門性を発揮し続けるためには、個人のレジリエンス(楽観性等)に加え、利用者との関わりの中で「自立に向けた変化」を喜びとして共有できることが重要であると説かれた。

 
【事例発表会】

各区の代表者による事例発表を通じ、専門的アプローチや多職種連携、地域共生社会における支援の在り方が多様な視点から示された。

<安芸区> 100歳高齢者とその娘を支えるケアマネジメント
〜母娘の思いに寄り添い笑顔を取り戻した事例〜

泰山会居宅介護支援事業所 小山 豊明 氏

<佐伯区> 自己決定支援の大切さを改めて感じることの出来た事例

石内慈光園居宅介護支援事業所 末広 伸司 氏

<中区> 認知症の母と精神疾患のある息子との関わりから学んだこと

KOYOプラス・ケアプランセンター 木村 紀子 氏

<東区> 認知症により他者との関わりを拒んでいたが、多職種と地域住民との連携と協力により人との交流が再開できた事例

神田山長生園介護プランニング戸坂 堀 良志美 氏

<南区> 夫婦の関係・絆、思いを大事にできる支援

ケアサポートセンター丹那 倉光 良卓 氏

<西区> 家族療法の活用で利用者と介護者の関係が改善し、業務負担軽減にも繋がった事例

井口台介護ステーション 荒神 希美 氏

<安佐南区> 多職種が連携する事で、認知症の高齢者と障がいのある孫との二人暮らしが実現できている事例
〜孫と一緒に暮らしたい〜

慈光園居宅介護支援事業所 滝口 麻衣子 氏

<安佐北区> 在宅看取りを支えたケアマネジメントの実踐
〜「家で最期を迎えたい」という意思を支えた一事例〜

なごみの郷 居宅介護支援事業所 河原 真弓 氏

 
【事例発表会総評】
 講師より、ケアマネジャーは「生きる喜びを共に見出す専門職」であると総括された。
 全事例に共通していたのは、課題解決の先にある利用者の「本質的な願い」を汲み取る姿勢であり、この対人援助こそが専門性の根幹であると再認識した。
 活力を維持する鍵は、困難な支援の過程を率直に共有し、互いの粘り強い関わりを肯定し合うことにある。欠点ではなく「できている部分」に注目し、当たり前の支援を継続する現状を認め合い、利用者の小さな変化を「自立」として共に喜ぶことが重要であると強調された。
 本研修を通じ、孤立しがちな専門職がチームで互いを肯定し合う体制の重要性を学んだ。今後は、自らのワーク・エンゲイジメントを大切にしながら、利用者の「生きる喜び」に寄り添った質の高い支援を展開していきたい。
 
(アンケートまとめ)
1.研修会に参加していかがでしたか。(回答数 108人)
非常に有意義だった   78人(72.2%)
有意義だった   30人(27.7%)
普通   0人( 0%)
あまり良くなかった   0人( 0%)
 
2.研修内容は、今後の実務に役立つ内容でしたか。(回答数 107人)
非常にそう思う   77人(71.9%)
ややそう思う   29人(27.1%)
あまりそう思わない   1人( 0.9%)
そう思わない   0人( 0%)
意見等(抜粋)
○研修内容について
  • 事業所の管理者が聞いてほしい研修内容でした。ケアマネ1人では限界があり、いかにチームで良い職場を作っていくかを考えさせられました。ケアマネとして事業所として個人からチームで支える仕組みが取れるようになればと感じました。自分1人で抱えなくても良いと思えました。
  • これからの業務・事業所のチーム形成をするために参考にしたいです。仕事のやりがいや取り組みについて改めて考えることができ、事業所への愛着は大事だと思いました。
  • ワーク・エンゲイジメントを高めることで質の良いケアマネジメント、業務継続につながると思います。事業所のチームで高めていく取り組みかできるだけでかなり気持ちが変わると思いました。
  • 研修内容が、今ぶつかっている壁だったのでとても心に響き、自分の気持ちと向き合うヒントも得られて前向きになれました。
  • なかなか表立って話題にしにくい内容を言語化していただけた。事業所運営に活かしていきたい。
  • クワイエットクイッティングの職員さんはどこにでもおられますが、しかし、そういうケアマネに出会うと、人生の伴走者としてのケアマネを変えることも難しく、その人も周囲の人も大変残念なことです。ケアマネになることが目的化する人もおられますが、なんとか、利用者の自己実現を共に喜ぶ、成功体験を味わってもらい、共に学んでいって欲しいと願っています。ちなみに、身体的な自立支援を一定アウトカム評価できるツールはありますが、自律や自己実現などを評価するツールはあるんでしょうか?
  • 効率化が求められる中で、ケアマネジャーの本当のあるべき姿勢・役割・使命を再確認できた。
  • 20〜30代の若い方に、ケアマネジャーのやりがいについて今後発信していきたいと思いました。
  • 畑先生お話しはとても参考になり勇気づけられました。まさにその通りだと思います。ケアマネだけでなく多くの職業にも当然当てはまりますが、エッセンシャルワーカー等のやりがいは数字になかなか表せない評価が大切になると思います。
  • 介護支援専門員として色々な事をする事は必要不可欠であり、それを出来ないことと割り切る事は出来ないのが現状である。そのはたらきには対して加算ではなく、ケアマネの処遇改善での給与の安定をしないと、今後ケアマネになろうとする人はいなくなっていくと思います。
  • シャドーワークに関する様々な意見も知れて興味深く思いました。付加価値とは思わないけれど、支援者には緊急性、一時的に生じる事象であることは確かで、議論の余地のある課題であると感じました。
  • ケアマネの仕事の線引きが難しいと改めて思いました。担当利用者だけでなく、取り巻く家族、環境全てをひっくるめた支援の必要性を痛感しました。
  • 畑先生の講演は介護支援専門員からの視点でお話をされとてもうれしかった。介護支援専門員をとても大切に思って頂いていると感じた。
  • パワーポイントの資料も分かりやすく、話すスピードも早すぎずハキハキとしていて丁度よかった。
○事例発表について
  • 困難事例、複雑な事例が増えている中、マネジメントの方法や、支援の視点など視野を広げる機会になったと感じています。
  • 年々難しいケースも増え、事業所内や地域内での支え合いが重要だと思う。
  • 本人の望む生活に近づくために、何ができるかを共に考えることが大切であると再認識できました。家族との関わり方、利用者・介護者の間に入り傾聴を行い、本人家族に寄り添う関わり方を再認識させられました。
  • 家族療法が勉強になりました。技法をもっと学んで支援に取り入れていこうと思いました。
  • 事例発表では振り返りも含めた検討会をしてみたいと思いました。
  • 皆様の事例を聞いて頑張っているケアマネの姿勢にとても元気をいただきました。
 
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
  • ヤングケアラー、精神疾患の家族、低所得者支援等の対人困難事例
  • 認知症、虐待、障がい者の方の支援
  • 困難事例や成功事例などの発表やテーマに沿ったグループワーク
  • 進行性の病気の在宅医療について
  • 障害サービスと介護保険サービスを合わせて利用されるケースについて
  • 児童の支援員について
  • 家族療法について
  • 高齢化の進む地域の取り組みについて(地域共生、地域創生などの全国の事例など)
  • 県外のケアマネジャーの方々の地方ならではの悩みや支援内容など
  • 多職種連携を深めるために必要なこと
  • 本人・家族への説明力の向上、インテークの仕方、信頼関係の作り方
  • 実践的な業務改善の研修(AI活用での業務改善例や手法など)
  • 職員の質の向上につながるような研修
  • ケアマネの更新研修変更など制度改正
  • シャドーワーク
  • 精神的ストレスを軽減させる方法や考え方
  • カスタマーハラスメント対策・対応